知識ネットワークの活用/中川 普巳重

 ちょっと誰かに聞きたいのだけれど、こんなこと誰に聞けばいいのだろう?
日々の事業活動の中でこんなことはありませんか?

 日頃、創業ベンチャーの方、第二創業の方の事業活動をご支援する中で、いろ
んな問い合わせが入ります。
 ・ある金属を加工する際に熱が発生してどうしてもうまく仕上がらないのだが
  金属物性について誰か相談できる人はいないだろうか?
 ・お客様からの問い合わせで、○○(分子レベル)の保管容器にも使えますか?
  と聞かれたが、○○の物性が良くわからない。○○の物性について誰か相談
  できる人はいないだろうか?
 ・新製品開発を考えているのだが、当社にとっては新分野への進出。十分な業
  界知識も無いけれども技術には自信がある。誰か業界に詳しくて競合関係に
  無い人に技術評価してもらいたいのだがそんな人いるだろうか?
 ・創業間もないがストックオプションを発行したい。この際の発行価格はどう
  やって決めるのだろうか?
 ・プログラム開発の仕事を受注したが、業務が集中して人手が足りない。誰か
  ○○言語の経験者で手伝ってくれる人いないだろうか?
 ・こんなセミナーを企画しているのだが、誰かに紹介してもらえませんか?
 ・こんな商品を企画しているのだが、販売候補先を紹介してもらえませんか?
ちょっと相談したい、技術パートナーを探したい、多忙時に手伝ってくれる人を
探したい、販売先候補を紹介して欲しい、などなど、日々のちょっとしたことか
ら事業進捗に深く関わることまで、ニーズは多種多様です。
 いつでも気軽に何でも聞ける頼もしい相談者が社内にいればいいのですが、目
先の業務に忙しい中で、いろんな課題をスピーディーに解決していくためには、
どうしても第三者の存在が必要になってきませんか?

そんな時に、活用したいのが「知識ネットワーク」なのです。
 知識ネットワークとひとことで言っても、単に気軽に聞ける人ということでは
ありません。経営のスピードを上げるための「知識ネットワーク」とは何か?を
少し考えてみたいと思います。
 企業を取り巻く環境は日々変化しています。その変化のスピードはとても早く、
変化に応じた開発スピードを要求されている業界も多いのではないでしょうか。
また、変化は多方向から突然やってきます。このため常に情報アンテナを高くし
ておく必要に迫られています。
 先日も、ある分野ではシェアNO.1の企業さんが、昨年末からの急激な市場
環境の変化を受けて、海外企業との価格競争の波に飲まれ、1年の売上の半分以
上を占める案件受注を逃してしまいました。業界全体がコスト低減に向けた技術
改良に必死に取り組んでいますが、市場環境の変化スピードと開発スピードをあ
わせていく事は至難の業です。こんな時に、これまでの知識を資源化できている
企業が、そして技術改良に必要な知識ネットワークを活用できた企業が、「いま
この環境変化に対して何を行うか」ではなく、「いかに行うか」を重要視して戦
略を立てられた企業が、この競争に勝ち残っていくのだと思います。つまり、
「知識ネットワーク」の活用は、様々な環境変化に対応し、課題を解決し、経営
のスピードをあげるために重要なものだと言えるのではないでしょうか。

 ところで、知識=ナレッジとは何でしょうか?
データと情報の違い、知識と知恵の違いから少し見てみると、データは企業活動
によって発生した事実であり、データを利用者が必要とする形に意味づけして整
理したものが情報です。そして、知識とは人が何からの行動をする際に必要な情
報であり、知恵はそこに工夫が加味されたものであり価値を創り出すもととなり
ます。そして、適切な情報つまりは知識が得られる環境を作ることは、知恵⇒価
値の創造を生み出す環境を整えることにつながります。

 なんとなく「知識ネットワーク」の意味や必要性についてはご理解いただけま
したでしょうか? では最後に、それはどこにあるのか?またどうやって作るも
のなのか?について考えてみたいと思います。
 まず重要なことは、知識提供者の信頼性です。そして、その知識提供者ができ
ることなら何らかの集合体であることが望ましいと思います。その集合体は多様
な個人の集まりであり、一定規模以上の知識が流通していて、常に新しい知識の
供給が継続的に行われ、情報セキュリティも確保され、新しい価値創造への支援
者であるコーディネータも存在していることが望ましいと思います。

 例えば、行政の支援窓口を通じて活用できる専門家人材、OB人材のネットワ
ーク、ITC京都や中小企業診断士など士業のネットワーク、大学の産学公連携
窓口、など既存のネットワークも多く存在します。独自に構築する場合は、かな
りの労力と時間を要すると思いますが、既存のネットワークを活用しつつ、そこ
から人を介して、新たな知識提供者と出会い、独自にネットワーク化していくと
良いのではないでしょうか。

 まずは出会うこと。この機会に、自社にとってどんな知識が必要かを考え、ど
こにその知識が存在しているのかを探索してみませんか?いざというときに活用
できる「知識ネットワーク」の確保をおすすめします。



■執筆者プロフィール

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)

 京都リサーチパーク株式会社 EBSセンター(ただいま産休中)
 中小企業診断士、ITコーディネータ、日本経営品質賞セルフアセッサー、
 キャリア・デベロップメント・アドバイザー
 Eメール fumie-na@k4.dion.ne.jp


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