「儲けるための基盤」と「儲かる仕組み」/ 竹内 肇

「ITは儲ける手段としての道具」などと良く言います。
 これを「ITを活用すれば儲かります。」と短絡的に解釈されているとすれば、それは誤解です。どんなにITを活用しようとも、「儲けるための基盤」と「儲かる仕組み」が無ければ、儲かるはずがありません。

 「儲けるための基盤」とは、何でしょう?
 例えば「製品」や「サービス」、あるいは「技術力」などがそうです。しかし、それらが単に「存在する」だけでは儲けるための基盤とは言えません。他より優れていることが必要なのです。これを「コア・コンピタンス」といいます。一般的には、「他社には真似のできない自社ならではの価値を創造する中核的能力」と説明されています。「儲けるため基盤」とは「コア・コンピンス」なのです。

 「そんなものがあれば、苦労しませんよ。それだったら、ITなんかに頼らなくても誰でも簡単に儲けられますよ。」なんて嘆かれる方があるかも知れません。
でも、それは間違っています。コア・コンピタンス(儲けるため基盤)の源泉はどの企業にも存在しているのです。現在、その企業が存在しているという事実は、お客様が、何らかの理由によってその企業を選択しているからです。それは、他社にない「何か」を持っていることに他なりません。
 扱う製品やサービス、技術力などが素晴らしいのか、価格が安いのか、立地条件が良いのか、あるいは、経営者や営業マンの人柄がお客を呼ぶのかもしれません。でも、そこにコア・コンピタンスの源泉があるのです。
 いずれであっても、それらをコアコンピタンスとして磨き上げることは可能なのです。それを認識できず、それを確固たるコア・コンピタンスとして育て上げようと出来ていないのです。

 もう一つ、コア・コンピタンスがあったからと言っても、誰でも簡単の儲けられると言うものではありません。コア・コンピタンス(儲けるための基盤)を有効に活用するための仕組み(儲かる仕組み)を構築しなけらばなりません。コア・コンピタンスをどの様な方法で磨きあげ、どの様な方法で認知してもらい、どの様な方法で製品やサービス提供し、如何に顧客に喜んでいただくか、そして、それらがどの様に儲けに結び付くかを考えることです。こうした事を一連の流れを「ビジネスモデル」といいます。すなわち、「儲かる仕組み」とは「ビジネスモデル」なのです。そして、この仕組みを構築することがビジネス戦略そのもなのです。

 この戦略の展開において、ITは素晴らしく効果的に効率的に機能するのです。
ここに「ITは儲ける手段としての道具」言われる所以があり、「IT有りき」の戦略がうまく機能しない理由なのです。「ITを活用すれば儲かります。」との解釈が誤解と言った意味を理解していただけたでしょうか?

 経済産業省推進資格・ITコーディネータは、経営とIT活用に精通した専門家として、企業のコア・コンピタンスの抽出からビジネスモデルの構築と、企業規模に見合ったビジネス戦略の策定、及び、もっとも効果的なIT活用を支援いたします。


■執筆者プロフィール

竹内 肇(タケウチ ハジメ)
takeuchi@pangkal.com
中小零細企業の経営革新支援・合資会社パンカル 代表
http://www.pangkal.com/
ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、公認システム監査人