
まず初めに、みなさんは「健康経営」とは何かをご存じでしょうか?
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つなんです。
経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度として、2014年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、2016年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「見える化」し、社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。
経済産業省HPより
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
健康経営の推進は2014年から約11年が経過してはいるものの、広く取り組まれていないように思います。なぜ「健康経営」が進まないのでしょうか? そもそも、経営的な視点で健康管理を行うことの必要性が認識されていない、具体的な取り組み方法がわからない、費用対効果がわかりにくい、などが考えられます。
個人的には、コロナ後、経営者や従業員の健康管理の必要性を目の当たりにする機会が増え、経営だけでなく健康も併せてサポートしていく必要性を強く感じています。また、労働力人口に占める高齢者の割合が増加傾向にあり、平均寿命と健康需要の差が約10年あることを考えれば、生涯現役として、健康で元気に、安全に働いてもらうための健康管理は経営にとって必要不可欠な取り組みであると考えます。
時間とお金をかけて取り組むからにはメリットが気になりますね。
2025年4月 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「これからの健康経営について」PDFよりご紹介しておきます。
次に、健康経営のフレームワークは以下の通りです。
取り組みにあたっては、何をやるかの「やり方」だけではなく、以下の図にあるような「在り方」も併せてしっかり議論する必要があります。
健康経営研究会HPより https://www.kenkokeiei.jp/whats/
健康経営は奥が深く、時間をかけて継続、定着させ、組織風土化していくものです。
IT経営と同じく、全社戦略として捉え、データに基づき、投資対効果を重視し、従業員のエンゲージメントを高めて持続可能性を重視する必要があります。
前置きが長くなってしまいました。最後に、健康経営の中でもITツールの活用について少し触れて終わりたいと思います。
■ウェアラブルデバイスの配布
配布されたウェアラブルデバイスを従業員に身に着けてもらい、歩数、運動状況、脈拍、心拍、睡眠時間などのライフログデータを収集することで従業員の健康状態が可視化できます。従業員は自身の健康状態が把握でき、健康への関心が高まり、改善のためのセミナー受講や、改善行動を促すことができます。
■ウェアラブルは熱中症対策としても活用したい
厚生労働省の法改正により、2025年6月1日から熱中症対策に関する新たな措置が、事業者の義務として施行されました。
詳しくは厚生労働省HPをご確認ください。 https://neccyusho.mhlw.go.jp/
ウェアラブルデバイスを身に着けることで、熱中症対策の対象となる作業者の身体的状況が把握でき、水分補給や休憩のタイミングまでわかれば、熱中症予防に大きく貢献することが期待できます。
■ウェアラブルで見える化した睡眠を管理することは生産性に関係が深い
睡眠不足が注意力、集中力、記憶力、判断力などに影響することは知られているところです。創造性が必要とされるIT企業などでは職場内に睡眠スペースを設けていることもあります。睡眠は時間だけでなく、その質が重要であり、自覚がなく不眠症の場合もあります。ちなみに、不眠症には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つのタイプがあります。横になった瞬間に眠れるという方は、本来、副交感神経が優位になるまでの時間がないままに寝落ちている、それはもしかすると気絶に近い状況かもしれませんね。
話が脱線してしまいましたが、健康管理には、血流、体温、睡眠の質が大事であり、これらを見える化できるウェアラブルデバイスとアプリケーションは健康経営に欠かせないものだと考えます。見える化し、理想の状態を学び、改善を促し、具体的な改善策、例えば飲む、着る、寝る、塗る、運動するなどの習慣化しやすいものを会社で導入する、福利厚生として紹介する、全社戦略として従業員の健康を管理しながら、個別具体的な対策にも取り組んでいく企業様が増えていくことをイメージしながら終わりたいと思います。