どうすれば売上は向上するのか、また、業績は回復するのか。企業が厳しい生存競争に勝ち抜くためには、「自社の勝てる場」を具体的にイメージすることが必要です。そのためにはやはりSWOT分析を実施することが最も有効となります。
その手法を実際の事例で紹介します。
≪事例 食肉卸業者の「勝てる場の創造」≫
この会社はこれまで輸入食肉を主体に、スーパーマーケットに販売を行っていました。商品自体にこれといった特徴がないため価格競争に巻き込まれ、粗利率も10%台と低く、毎年、苦しい経営を続けていました。
この企業をSWOT分析すると次のようになりました。
【強 み】顧客提案力、販売企画力
【弱 み】主力商品が低粗利の輸入肉
【伸びる機会】健康・自然ブーム、得意先である地域中小中堅スーパーの販売力
の弱さ
【脅 威】大手スーパーの進出による得意先スーパーの衰退
以上の現状から、読者の皆様であればどのような「勝てる場」を設定されますか。
「勝てる場」を考える場合、例えば、次のような着眼点を見出すことができます。
1.まず、低粗利商品から粗利益のとれる付加価値商品に主力商品を転換しなければなりません。そのためには輸入肉から国産の「こだわり肉」へ転換することが必要です。こだわりのポイントは「健康・自然」、例えば、餌(無添加)と水(天然水)にこだわりを持つ生産者を全国から厳選し、そこと直仕入契約を結びます。
2.次に、得意先である地域中小中堅スーパーの営業力の弱さを補完できれば、価格競争に巻き込まれる心配はなく、対得意先関係でも主導権を握ることができます。そのためには棚割提案、キャンペーン提案、レシピ提案等を積極的におこなう事が大事です。その結果、その売場が地元住民に支持され、業績アップにつながれば、「大手スーパーの進出による得意先スーパーの衰退」という脅威も解消できます。
以上より、この会社は次のような「勝てる場」を設定しました。
【勝てる場】飼育方法にこだわった国内生産者からの直仕入と得意先スーパーの営業支援
また、この「勝てる場」を実現するために必要な要因(成功要因)を検討すると、次のような項目をあげることができました。
【成功要因】
1.飼育方法にこだわった国内生産者の選定と直仕入契約の締結
2.得意先スーパーの営業支援
・棚割提案
・キャンペーン提案
・レシピ提案
この食品卸売業者は、このような「勝てる場の創造」と成功要因を実施した結果、粗利率は7%も上昇し、業績は急速に回復したのです。
■執筆者プロフィール
梅津 政記(うめづ まさき)
株式会社新経営サービス
チーフコンサルタント 中小企業診断士・ITコーディネータ
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