1.はじめに
最近の我が国の経済は、薄明かりが射しつつあるように噂されています。一方、世界を見ますと、21世紀型の大競争時代に突入し、「勝ち組」と「負け組」の2つの色分けが鮮明になりつつある雲行きです。ほんの少しの刺激的な情報が、瞬時に全世界を駆けめぐり一国の経済を動揺させ、果ては、本意とは異なる状態を引き起こす可能性さえあります。この様な状況が発生する要因の1つは、IT(情報通信技術)の関与によるところが大きいといわれています。
さて、「勝ち組」になるための極意は、人を如何に育て、如何に活用し、如何に成果に結びつけるかでしょう。ここではその人材(人財)教育についてふれてみます。
2.人材教育のポイント
ここでは、人材教育の一例についてふれてみます。
一般的な教育カリキュラムの考え方は、“いつ、誰に、何を、どのような方式で”実施するかということになります。
(1)“いつ”
教育の必要に気づいたとき、もしくは、あらかじめ必要であると予測されたときに行います。
(2)“誰に“
その教育を受けるにふさわしい人で、意欲的な人が望ましいのです。特に最初に受講者される方は、人望があり優秀な人であることが望まれます。その理由は、受講者が、受講した知識をその部署や他部署の人達に適切な説明・伝授がされなければならないからです。
(3)“何を”
各部署や部署間の連携で必要な内容を取り上げることになります。各部署で必要な知識・内容は、部署毎に専門化されているのが通常です。専門分野には、例えば、企画、設計、製造、生産管理、営業、財務、OA、経営管理などが考えられます。併せて、その企業の“経営理念”のように、企業の“あるべき姿”に関する教育もあります。
(4)“どのような方式で”
大きく分けて、2つの方式があります。なわち、OJT (On the Job Training)とoff JT(Off the Job Training)があります。OJTは、職務に従事して行う職業訓練です。 off JTは、職場外訓練です。off JTの例として、社外の最先端技術・情報通信技術・設計手法・製造ノウハウ・マーケティング・販売方法・PL・ISO-9000・ISO-14000・経営戦略・経済/政治/環境動向などの講演会・講習会を受講することや、社外から講師を招き講演・講習を聴講することなどです。
このようにして受講した内容は、各部署に持ち帰り、聴講者が指導員として他の社員にOJTをおこないます。したがって、このOJT教育を、行う指導員の役割はとても重要になります。
3.おわりに
冒頭に述べましたように、最優先のキーワードは“企業は人なり”です。世界・業界の状況が、時事刻々変化する中、現場作業者、監督者、管理者、経営者に至るまで英知を集めて課題を解決するためには、“継続的な教育・実践活動”が益々に重要になってきす。21世紀の「大競争時代」という大きな波が、望むと望まないとにかかわらずどんどん押し寄せてきます。我が国の産業が、資源の乏しい国でありながら努力を重ねて今日のように発展してきたのは、産業人の人材育成に成功したからです。この自信を糧にし、各部署の人達への“厳しくも心温まる教育”が継続的に行われることが期待されています。
[参考文献] 工場情報化辞典 計画編 上巻、フジテクノシステム 1990.12
■執筆者プロフィール
柏原 秀明 (かしはら ひであき)
技術士(総合技術監理・情報工学部門)
ITコーディネータ
ISO-9000審査員補
ISMS(情報セキュリティ・マネジメント・システム)審査員公認システム監査人補
E-mail: kasihara@mbox.kyoto-inet.or.jp