今回は、「企業価値」というテーマについてお話しします。
今から10年ほど前、バブルが崩壊し日本企業の株価が大暴落していたときの話です。「これだけ日本企業の株価が安くなっているのに、なぜ”日本買い”が進まないのか?」と海外機関投資家に質問を投げかけたところ、「日本企業のバランスシートが信用できないからだ。」と言う明快な答えが返ってきたそうです。
そのころから、「日本企業の財務状況について透明性を高める」との大義名分のもと、新会計制度の導入が進んでいったことは記憶に新しいところです。
我が国上場企業の株式時価総額は、バブルの頃に比べ半分以下になっています。
日本企業の価値は、10年前に比べ半分以下になってしまったのでしょうか。企業の価値を株価だけで判断しないとすれば、企業の価値はなにを基準に判断すべきなのでしょうか?
現在、企業価値を評価する基準として様々な指標が議論されています。その中で一番重要なのは、資本効率という指標です。企業が使うカネ(資金)にはすべてコストがかかっています。支払利息の発生する借入金だけでなく株主資本(資本金等)にもコストがかかります。これを上回る利益を上げないと企業は成長することが出来ません。資本効率を上げる=なるべく少ない資本(資産)でなるべく多くの利益を上げる、経営が必要なのです。これが企業価値を高める経営に他なりません。
1例を示します。
利益率はいいが回収サイトの長い取引:利益率がいいと言うことは、当然利益が大きいと言うことで資本効率を上げる要素になります。逆に、回収サイトが長いと言うことは資本コストを増加させる要因になります。
他にも、「操業規模確保のための在庫積み上げ」は資金を寝かせていることになり資本コスト増の要因になります。このように、従来、日本企業では利益を増やすために当たり前のように行われてきたことも、資本効率を考慮するとマイナスになることもあります。
ある統計資料によると、1999年の投下資産利益率の日米比較を行うと、米国の16.5%に対して、日本は2.0%に過ぎません。これはバブル経済前の1980年代から変わっておらず、近年は差が拡大する傾向にあるとのことです。我が国経済の高成長が、資本生産性の低さという日本経済の問題点を覆い隠していたのではと思ってしまいます。
低成長時代の中、企業価値を高める経営を志向したいものです。
———————————————————————-
■執筆者プロフィール
藤原正樹(フジワラマサキ)
中小企業診断士 公認情報システム監査人(CISA)
e-mail:masaki_fujiwara@nifty.com
———————————————————————-