パフォーマンス・マネジメント/洲崎 章弘

こんにちは、ITC京都の洲崎章弘です。私は、ITCとしての活動と同時に中小企業の経営者として日々あれこれ悩んでいることもあります。経営者のみなさんと同じ目線でいろいろと考えたこと、感じたことなどをご紹介していきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 パフォーマンス・マネジメントという言葉を聞かれたことがありますか?

 人は仕事や人間関係がうまくいかないとき、その原因を他人や自分の能力、やる気や適正のせいにして、問題解決のためのアクションをとらないことが多くあります。このように個人のせいにしてしまうことを「個人攻撃の罠」というそうです。逆に、このようなときに科学的に解決しようというのが、パフォーマンス・マネジメントの考え方です。

 今日は、『パフォーマンス・マネジメント』-問題解決のための行動分析学-(島宗理著)をご紹介させていただきたいと思います。この本のはじめに、「行動の科学はここまで進んでいる。勘や経験に頼らなくても、あるいは運まかせにしなくても、我々は自分たちの行動を科学的にマネジメントできる。社会や組織や個人の、様々な問題を解決していける。能力がないとか、資質がないとか、他人や自分を責めなくてもいい。」とあります。

 経営者や管理職は社員や部下に仕事を指示する場面が多いと思います。仕事を依頼したときに、こちらが思っている通りに仕事をしてくれないことがあります。
頼まれた人はやる気がないわけでもなく、能力がないわけでもない。初歩的な例であれば、依頼するときに漫然と口頭でするのではなく、注意事項をチェックリストを使って説明し、仕事の完了時にそのリストを使ってチェックしてもらう方法があります。チェックリストを使うことにより、依頼された人は仕事が完了したことがはっきりとするのでほっとしますし、依頼した人にそのリストでチェックしてもらうことにより、ほめられます。このようにチェックリストと使って、うまく仕事が進むようになると、その行動は強化され繰り返されます。これを「強化の原理」といいます。

 逆に「個人攻撃の罠」にはまると、部下のやる気や態度などに執着してしまいます。しかし、そのどちらも上司には手の届くところにはありません。この例のようにチェックリストを使うことなら誰にでもできます。「個人攻撃の罠」にはまらずに自分ができることをしていこうというのが「パフォーマンス・マネジメント」の考え方です。勘や経験だけに頼らずに、公開されている研究成果を使って、科学的に対処していこうということです。

 この本には上記の他にも日常にありそうな例をたくさん挙げて、「パフォーマンス・マネジメント」の原理を説明してあります。問題が起こったときに、他人や自分のせいにせずに、「パフォーマンス・マネジメント」を利用して問題解決に当たれば、ストレスも減るのではないでしょうか。私はもともと理系で、文系のことはなんとなくあいまいだと持っていましたが、この本を読んで、心理学や社会科学に興味を持ち、人間の行動も科学的に考えていくことが大切だと強く感じました。


■執筆者プロフィール

洲崎章弘(すざき あきひろ)
洲崎鋳工株式会社 取締役 http://www.suzaki.co.jp
中小企業診断士、ITコーディネータ、ITCインストラクタ
 新しいことに挑戦するのが好きで、自社の経営に加えて、「京都試作ネット」
の運営や「有限会社キララ21」の経営に参画している。
 「京都試作ネット」は、京都の製造業10社が集まり、試作に特化して、企業
にソリューション提供サービスをしているグループ。http://kyoto-shisak.com
「有限会社キララ21」は、ハードディスク完全消去ソフト「ピーマン」、CD
ーROM駆動ファイルサーバー「だいこん」などの野菜ソフトシリーズを開発販
売している。http://www.kirala21.com