IT化のステージ/松井 宏次

ちょっとおしゃれな夫婦が自動車を買おうとしている。妻が、わたしはこの色が
いい、とつぶやくと、遥かかなたにあるらしい自動車工場で、塗装装置のロボッ
トアームが動き出す・・・。そんなITベンダーのテレビコマーシャルを覚えて
おいででしょうか。
コンピュータ制御の塗装システムは、生産自動化ラインとして発達して来たもの
で、それは、同じものをどこかから買ってくることができれば、基本的には同じ
加工ができる装置として成り立ちます。かたや、お客様のオーダーを生産ライン
まで送り届けるようなシステムは、どこかから買って来て据え付ければ良いとい
うものではありませんね。
 このコマーシャルの場面ほど単純ではないにしても、それぞれの顧客要望に従
ってその都度製品を組み立て出荷する、デル・コンピュータ社で代表されるよう
な方式は、IT活用によるBTO(ビルトトゥオーダ)の成功事例としてすっか
り有名になりました。
そして、一方、このBTOという方式で、いずれの企業もが成功を納め得るわけ
ではない、ということも留意すべきところです。

外から買いつけることができる「自動化」と、必要な情報がなにかを見極め必要
に応じて自在にあやつる戦略的な「情報化」とは、同じくコンピュータに支援さ
れているといっても、全く異なる性質を持っています。
デル社の事例も、決して生産部門におけるシステムの変更ということに留まるも
のではありません。
こうした当たり前のはずのことが、まだまだ十分理解され活用に結びつけられて
いないというのが、多くのIT化投資の現状のようです。

経済産業省がまとめている日本の上場企業を対象とした調査「我が国の企業のIT
化に対応する企業経営の分析」では、企業経営とIT化のレベルを
 ステージ1:IT不良資産化企業群
 ステージ2:部門内最適化企業群
 ステージ3:組織全体最適化企業群
 ステージ4:共同体最適化企業群  
に分け、IT 活用が経営の視点から成し得て、企業の全体最適に達しているか否
かという、ステージ2と3の間にある大きな壁を課題として取り上げています。
昨年2003年に発表された同調査では、ITを経営戦略に組み込み、業績を向上させ
ている企業の割合は、上場企業のなかで2割に過ぎないとされました。

ちなみに、こうした課題の克服は、企業の規模には関わらず可能なことでしょう。
経営視点からのIT化を行うステージに進む経営力をもつ中小・中堅企業が、旧態
のままの大企業を置き去りにして進む姿も、そこには見えて来るようです。


■執筆者プロフィール

松井 宏次(マツイ ヒロツグ)
ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
e-mail:hiro-matsui@nifty.com

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