☆企業を取り巻く環境
明るい色が流行し、景気に少し回復の兆しが見え始めたとは言うものの、中小企業を取り巻く環境は、依然厳しい状況を呈していると言わざるを得ず、ことに売掛債権の回収に至っては、回収期間の遅延、それに伴う債権残高の増加、支払条件の変更、そして不良債権化という状況が多かれ少なかれ見受けられます。
売掛債権の不良債権化は、経営規模の比較的小さい中小企業に資金繰りの悪化を招き、事業存続の危機をも招く可能性があります。
被害を極力なくすためにはどうすればよいでしょうか。以下に、その確認事項を列挙してみましょう。
☆商取引開始前における確認事項
1)商業登記簿謄本・不動産登記簿謄本などを入手したり、信用調査機関を利用し たりして取引先の事前の信用調査を行う。と、同時に与信枠の設定を行う。
2)契約書を作成することにより、取引条件を明確にする。
3)事前調査の内容に不安があったり、取引条件に納得がいかなかったりする場合は、取引を行わないということも選択肢の中に入れておく。
☆商取引開始後における確認事項
1)売掛債権が、与信枠を超えていないか、管理を行う。
2)与信枠の範囲を超えていない場合でも、売掛債権が急増した場合は、注意を払う。
3)回収状況を常に把握し、早期の回収が出来るよう心がける。
4)取引先から、支払条件の変更(決済日が遅れる、手形の割合が増加するなど)の申し出があった場合は、相手方に理由を確認し、契約を見直す必要がある。
5)場合によっては、取引先から、仕入れたりすることにより、売掛債権と買掛債権を両建てすることにより最悪の場合の被害を小さくする。
6)売掛債権の消滅時効期間は2年である。このことにも留意が必要である。
(売掛債権の時効は、原則、債権の発生日と弁済期日の遅い日の翌日から進行する。)
7)常時、得意先と接触したり、得意先周辺の信用情報等の入手に努めたりすることにより、早期に倒産の前兆を把握できるようにする。
取引先の倒産は、突然やってきます。被害を出来るだけなくすために日ごろからの管理が非常に重要となります。
☆情報技術の活用
上記の事項を実行するためには、タイムリーな会計帳簿(売掛帳などの債権管理帳票)の作成や、販売管理システムの構築が必要なことは、言うまでもありません。
タイムリーな会計帳簿の作成には、財務管理システムの導入が考えられます。
毎日、取引先の売掛金残高を確認することが出来、回収期間の延びや、異常な取引の把握が簡単にできるようになります。請求ミスを減らし、請求書の発行を早く行えるようにもなります。
また、財務管理システムと連動した顧客管理システムを導入し、社内で共有することにより、信用情報や過去の取引状況などを、必要な人が必要なときに調べることができ、そこへ新しい情報もどんどん追加していけるようになります。
顧客管理システムの導入は、売掛債権の管理のみにとどまらず、過去の取引を分析することにより、商品別・顧客別の売上を分析し、取引先のニーズを把握したり、新たな提案のヒントを発見したりすることにより、顧客満足度の向上や、ひいては売上の拡大に貢献できる可能性があります。
■執筆者プロフィール
小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、AFP
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。