社員のモチベーションを向上するには/洲崎章弘

こんにちは、ITC京都の洲崎です。日経平均株価が12000円を超え、日本の景気にも明るさが見えてきたようです。

 さて、ITC京都のメールマガジン[vol.0090]で、『IT活用人材の育成マニュアル』のなかから、「IT利用を活性化する方策の考え方」について、ご紹介しましたが、今回は、同マニュアルの「人材活用の研究」について、ご紹介します。

 あなたの会社では、人材活用ができていますか。社員のモチベーションを向上させるためにどのようなことをしていますか。社員の自主性・主体性を尊重していますか。そうは言っても、簡単じゃないですよね。指示待ち族の社員には、イライラするし、やる気のなさそうな社員に対しては、怒りたくもなりますよね。
 でも、ちょっと考えてみてください。社員は、どんなときにやる気を出して働いているのでしょうか。給料のために働いているのでしょうか。それともおもしろい仕事をするために働いているのでしょうか。経営学ではこれまで、人材活用に関して、いろいろと研究されています。研究が進むにつれ、モチベーションを向上させる方法がだんだんわかってきました。

1.テイラーの科学的管理法
 生産性向上について、一番初めに出てきた方法は20世紀のはじめにテイラーが考えた科学的管理法です。目標となる仕事量を科学的に設定し、その目標以上できた人には割増賃金を払う方法です。ただし、目標を科学的、合理的に定めないと労働者の理解が得られません。

2.ホーソン実験
 工場の照明の明るさを変化させたりして、仕事の能率の変化を調べようとしたのですが、結果的には、照明の変化よりも実験での一体感や達成感が生まれ、それにより能率が向上しました。このことから、人間の意欲、職場の人間関係が能率に大きく影響することがわかりました。

3.マズローの欲求段階説
 人間の欲求を低次元のものから順番に(1)生理的欲求、(2)安全欲求、(3)愛情欲求、(4)尊厳欲求、(5)自己実現欲求の5段階に分け、下位の欲求が満たされると順に上の欲求が生まれるという考え方です。下位の欲求が満たされた状態では、その欲求はもう動機付けの要因とはならず、その上位の欲求を満たすような動機付けが必要となります。

4.マグレガーのX理論・Y理論
 本来、人間は仕事が嫌いで、できればやりたくないと考えているので、「統制による管理」が有効であるという従来の考え方を「X理論」とよび、これに対し、人間は本来仕事が嫌いではなく、組織の目標と個人の欲求や目標を一致させる「目標による管理」が有効であるという「Y理論を」提言しました。

5.ハーズバーグの動機付け・衛生理論
 人間が仕事に満足を感じるときには、関心は仕事そのものに向いており、不満を感じるときには作業環境に向いている。前者をより高い業績へと人々を動機付ける「動機付け要因」とよび、後者を仕事の不満を予防する働きを持つため「衛生要因」とよび、この両方とも充実することが大切であるとしました。

6.ブルームの期待理論
 営業活動(努力)→受注(成果)→ボーナスアップ(報酬)というように、「努力→成果→報酬」という図式が成り立っているならば、その報酬によって動機付けができることを、モデルを用いて説明しました。

7.デシの内発的動機付け理論
 人は外的報酬ではなく、仕事それ自体のおもしろさによって、動機付けられ、逆に、金銭的動機付けなど外的報酬はそれを阻害するという考え方です。

 このように、モチベーション向上のための研究はいろいろと行われており、考え方もさまざまです。しかし、全体を通してみてみると、モチベーションを下げる要因とモチベーションを向上させる要因を区別して考える必要がありそうです。
そこで、次のようにまとめてみました。

(1)人のモチベーションを下げないためには、職場環境、給料、人間関係、会社の安定などが大切である。
(2)人のモチベーションを向上するためには、仕事自体のおもしろさ、自己決定権限が大切である。

 私は、これらのことを踏まえて、人材を活用できる会社にするためには、経営者は次のことをする必要があると考えています。

(1)社員が安心して働ける職場環境を整備し、
(2)社員にわかりやすくて挑戦的な目標を示し、
(3)社員が仕事を楽しめるようにする。

 社員を財産と考え本当の人材活用をするのは、経営者の仕事です。会社は人で成り立っています。いくら能力を持った人でもモチベーションが低くては能力を発揮できません。経営者は、会社を社員一人一人の能力を最大限に発揮できるような場にして、会社と社員がともに成長できるようにしたいものです。


■執筆者プロフィール

洲崎章弘(すざき あきひろ)
洲崎鋳工株式会社 取締役 http://www.suzaki.co.jp
有限会社キララ21 取締役 http://www.kirala21.com
中小企業診断士、ITコーディネータ、ITCインストラクタ
「有限会社キララ21」は、ハードディスク完全消去ソフト「ピーマン」、CDーROM駆動ファイルサーバー「だいこん」などの野菜ソフトシリーズを開発販
売している。http://www.kirala21.com