上海最新事情/安井伸夫

私が関与する会社が10年前に上海に現地法人を設立しました。その現地法人が成功し、本社工場を建設したとのことで、視察に行ってまいりました。中国ビジネスの最先端だけでなく、一般の観光客なら決して立ち寄らない最下層の人々の暮らしぶりなどを見学致しましたのでレポートします。

1.環境と人口
 環境は最悪で、上海には青空がないと言われるほど、ほこりまみれの街です。
長江の支流が一般庶民の家の間を流れていますが、汚い以上の何ものでもありません。
 土地はまだまだ未開の地が多く、シンガポールより大きいと言われる浦東地区は、これから発展する予定で、地元の上海っ子ですら、住所をいっても分からないところだらけだそうです。
 建物は、レンガ造りのバラック小屋が次々に取り壊され、マンション建設が進み、人口は約1400万人。東京が約1000万人ですから、東京より遥かにスケールが大きく、2010年の万博までに約2500万人が居住すると予測されています。

2.資本主義
 共産主義の国ですが、世界一資本主義的な街という印象を得ました。この10年で、上海っ子全員が、人にサービスをするとどういう見返りがあるのかということを学習したようです。
 経済成長率は毎年2桁成長!まさに高度成長期です。しかし、日本の高度成長と異なるのは、給料の伸び率が低いところです。やはり、それだけ人口が多いということでしょう。

3.経営上の悩み
 見渡す限りの田園地帯が、江沢民の一声で工業地帯に早代わり!私が訪れた現地法人もその工業地帯の中にあります。土地は広く、建物も立派で、工場の生産ラインは最新!ないのは技術だけでした。
 急成長し今後も発展する会社ですが、いろいろな悩みを抱えているようです。
生産上の悩みは日本の技術指導で解決するそうですが、販路の開拓、新規顧客の獲得が最大の悩みだそうです。どこの国でも同じですね。

4.ノウハウ
 中小企業でも日本から中国に多くの会社が進出しましたが、撤退を余儀なくされた会社が多いようです。そんな中で、この会社は非常に稀なケースで大成功したといってもよいでしょう。単に運が良かっただけでなく、それなりのノウハウがあるようです。日本の名だたる大企業が頭を下げて指導を請いに来るほどのノウハウだそうですが……いろいろありますね。

5.雑感
 このまま行けば、日本の企業とりわけ製造業は死活問題です。何をやってもあれだけのスケールには敵いません。生き残りたければ、如何に中国と共同してやっていくかを考えるべきではないかと思いました。
 また、あれだけの人口を支えるために農業の重要性を感じましたし、このまま工業化していって大丈夫なのか大変不安な気持ちになりました。


■執筆者プロフィール

安井伸夫
有限会社経営サポート 代表取締役
税理士・社会保険労務士・1級FP技能士・ITC
http://www.keiei-s.com