プロジェクト管理の重要性/西田 則夫

企業経営者にとって情報化投資が重要な課題となってきた現在、システム開発の内容も高度で複雑になってきました。また、景気の低迷にともなってコスト削減や高品質のシステムを短期間で構築することが求められています。このようなシステム開発を予算内で、要求された機能を、期間内に完了させるためのプロジェクト管理が重要となっています。ただ、プロジェクト管理を実施できる人材が業種をとわず不足しているのが現状です。

 「情報化白書2003」によると情報システム部門におけるスキル保有の充足状況の結果は、プロジェクト管理において、”非常に不足”、”やや不足”と回答しているのは、85.5%になっています。
 こういった状況で、システム開発における失敗の原因の多くはIT関連企業に拠るところが大きいとはいうものの、選定した顧客側にも原因はあるはずです。
例えば、次のような点が有効に実施されていたかということです。

 ・社内で自社のあるべき姿(To-Be)を描き、それを実現すためのシステム活用について十分な検討したか
 ・同業他社が投資したという横並び意識で、または、予算内で取りあえず安易に発注していないか
 ・トップや現場のコンセンサスは十分にえられたか

 システム開発の成否はプロジェクト管理能力によるところが大きいため、IT関連企業のプロジェクト管理能力を十分に目利きをし、情報化投資を成功に導くことが、発注側に求められる仕事でもあります。ただし、自社のみでパートナーの選定が困難な場合には、コンサルタントやITコーディネータの中立的な立場の人材を活用することも有効です。情報システムと経営との関わりが密接になってきた今日、顧客にもプロジェクト管理能力をみる眼が必要となっています。

 顧客側としては、社内システムの現状や情報システム部のスキルの現状やAs-IS(現状の姿)を知り、To-Beに至るプロセスとスキルを社内外に説明できる人材が必要となります。そういった、必要なキャリアパスについて考えた場合、経済産業省が策定した高度IT人材の能力を体系化したIT技術者のキャリアフレームワークであるITスキル標準(ITSS)があります。ただし、ITSSは、ベンダやSI企業向けのスキル標準であり、顧客企業が必要とするスキルとは異なります。顧客向けのスキル標準として、SFIA(SkillsFrameWork for the Information Age)というものがあり、経営課題に貢献するIT企画から開発、管理、運用に至るIT関連業務に求められているスキルを7段階に分けて定義しています。

 ベンダ、IT関連企業への丸投げでなく、顧客側においてもプロジェクト管理をきっちりとおこない、社内での情報システム部門のキャリアパスを確立することが情報化投資を有効に機能させる要素となっています。


■執筆者プロフィール

西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネージャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
Norio_Nishida@cii.csk.co.jp