課題を浮かび上がらせるIT化検討/松井 宏次

紅葉も盛りとなりました。色づく山々を眺めて一息ついているうちに街にクリスマス装飾が目立ちはじめ、いつの間にか年末が近づいて来ます。
 紅葉のメカニズムや、赤緑白のクリスマスカラーのいわれなどもちょっとした話題になる時期ですね。この手のうんちくはGoogleなどのWEB検索ですぐにヒットします。もしもご存じない方は、話のタネに一度引いてみてはいかがでしょう。
さて、いろいろな年末スケジュール進行も気になる今日この頃、今回は、生産管理に絡んでIT化の検討過程の話です。

 先日、中小製造業の経営者のかたから「ITパッケージソフトの利用を申し出てくる生産部門の管理者に質問を続けてみると、納期管理をはじめ当人の今の管理業務が全部不要でITが取って代わってくれるかのような答えをしてくる。いい機会なんで、君はいったいどういう仕事をして来たの、って振り返ってもらったよ。」という話を聞きました。

 コンピュータがどこまででも解決をしてくれる(あるいは、するべき)かのような誤解や過度の要求を避けるために、ひとつには、IT化にあたって、計画、統制といった管理サイクルからみて異なるフェーズを混同して検討しないことが大切です。フェーズに応じた自社にとっての検討を重ねることが必要です。

 生産管理を例にとれば、「計画」は、加工の手順や使用設備を定める手順計画や、人や機械への割り当てを定める工数計画、そして、個々の製品の加工についての日程計画などから構成されます。そして、こうした計画は、そもそも計画通りには実行されないことから、「統制」が必要になります。生産統制もまた、手順計画を支える基本的なオペレーション訓練をはじめとして、様々な統制の内容がありますが、なかでも重要なものは、納期管理(進行管理・進捗管理・日程管理)です。
 そして実は、中小企業において、とくに、受注生産型の製造業では、この納期管理のような生産統制においてこそ、現場の経験と知恵による判断が効果的な場合が少なくありません。

 例えば納期といっても多様です。当日そのもの、当日までであればいつでもいい、当日を含む所定期間内であればいつでもいい、などと、さまざまなケースがあります。現場の責任者は、これらの納期の違いを巧みに使い分けて生産統制を行っている場合があります。
 生産統制をIT化の対象にする場合、こうした納期の種別を情報システムに組み込んで活用している企業もあれば、IT化は「計画」までを主とし、「統制」については細部に踏み込むことを避け現場のノウハウとして強いて残している企業もあります。どちらの選択も可能です。

 いうまでもなく「計画」「実行」「統制」は、伝統的な管理のフェーズです。
業務用パッケージソフトが充実してきた昨今、IT化の領域を定めるに場合に、こうした従来からの管理に照らし合わせての検討を、ついついおざなりにしてはいないでしょうか。
 IT化の検討の過程において、例えば生産統制であれば「見通しの良い管理(目で見る管理)が現場でできているか」「変更発生時の調整は特定の個人に依存しすぎていないか」などといったマネジメントの課題を、あらためて顕在化させる良い機会がつかめれば、そのことが大きな成果に繋がります。


■執筆者プロフィール

松井 宏次(マツイ ヒロツグ)
ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
e-mail:hiro-matsui@nifty.ne.jp