エース級を投入し仕入で利益を創る!/梅津 政記

 仕入れは企業が利益を創出する上で、極めて重要な位置をしめています。なぜなら、材料費や商品仕入額は最もコストウェイトの高い費用です。また、仕入れは比較的少数の人員で運営でき、しかも多額の利益を創り出すことができるからです。
 他方、仕入れに失敗すると、売れ残りが生じて在庫過多になったり、資金繰り難に直面し、企業利益を圧迫してしまいます。
 このように仕入は利益創出に非常に重要であるにもかかわらず、仕入れに力を入れていない企業が少なくありません。そのような企業は、在庫管理がいい加減で実在庫を正確に把握しないまま仕入れ行っていたり、仕入れ担当者が不明確で複数の者(例えば、建築現場や工場現場の作業員)がお互いの連携もなく仕入れを行ったりしています。さらに、従来の取引先と気心が知れているということで仕入価格が高いにもかかわらず取引を続けているようなケースも多くみられます。

 売上に関しては、どの企業も非常に力を入れています。そのため、営業担当者は何人もいます。ところが、会社の利益貢献度からいえば、仕入れは決して売上に引けをとるものではありません。とりわけ昨今のような不況の折には、顧客からの値下げ要求が厳しくなり、売上で利益をつくることが難しくなります。不況の時には買い手市場なのですから、仕入れで利益を創らなければなりません。
 このように、仕入れは利益貢献度が非常に高いにもかかわらず、専任担当者さえ置いていない会社を多く見かけます。これでは、いくら頑張っても利益を出すことはできません。

 価格競争が厳しい現在の経営環境で立派な利益を出している企業は、ほとんど例外なく仕入れが強いといえます。彼らは、営業に比べ仕入れは少数の担当者で運営することができ(通常、1人か2人しっかりとした人が核になれば十分です)しかもその少数のスタッフで営業と変わらないほどの利益を出せることを知っているからです。
 また、仕入れ担当者にはその会社のエース級の人材を投入しています。なぜなら、仕入れには次のように、経営全般をバランスよく理解している人材でなければならないからです。
 ・今後の販売動向を正確に読み仕入れを行わなければならない
 ・材料、商品の相場観を持ち、タイムリーな仕入れを行わなければならない
 ・在庫を正確に把握し、資金繰りを中心とした会社のお金の流れを理解しなければならない
 ・強いコスト意識を持っていなければならない
 ・タフな交渉者でなければならない

 エース級で優秀な仕入担当者が、次のような仕入活動を継続して粘り強く実行していけば、営業活動に劣らない利益創出を実現することが可能です。
 ◆定期的に価格交渉を行い、価格を見直す
 ◆仕入先を絞り1社当たり購入量を増やすことにより、仕入れ単価を下げる
 ◆価格交渉時には相見積りをとる
 ◆新規仕入先開拓を絶えず行う
 ◆定期的に仕入先を見直す
 ◆VE(バリュー・エンジニアリング)手法を取り入れ、材料・部品の標準化や、より低コストの代替品の導入を検討する

 以上のように、価格競争が年々激化する昨今のような市場環境では、その企業のエース級の人材を投入して仕入で利益を創出することが、経営戦略上、極めて重要となります。


■執筆者プロフィール

梅津政記(うめづまさき)
株式会社新経営サービス
チーフコンサルタント 中小診断士・ITコーディネータ
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