南の方からは、花便りが届くころとなりました。
今、所得税の確定申告の時期で、税理士である私は飛び始めた花粉と格闘しながら申告書を作成する日々です。(このメルマガが発行されるころには、全て完了していることを祈りながら。)
ところで、今年の確定申告から、個人納税者も電子申告が出来るようになりました。
電子申告とは、所得税など国税の申告・納税・申請をパソコンからインターネットを通して行うシステムです。
そこで、「まず櫂より始めよ。」ということで、自分自身の確定申告を電子申告により行うこととしました。以下は、申告手続きの概略です。
◎開始届出書
まず、所轄税務署に「電子申告開始届出書」を提出します。
◎電子証明書の取得
次に、電子署名(従来の申告時の記名押印の代わり)をするための電子証明書を取得します。
一般納税者の場合は、お住まいの市区町村で住民基本台帳カードを取得し、その中に、公的個人認証サービスによる電子証明書を書き込んでもらいます。
◎ソフトウェアのインストール
次の3つのソフトウェアをパソコンにインストールします。
a)ICカードリーダのドライバソフト(カードリーダに付属)
b)公的個人認証サービス利用者クライアントソフト(市区町村より交付)
c)e-Tax(電子申告)ソフト(所轄税務署より交付)
◎初期登録
e-Tax(電子申告)ソフト上で利用者識別番号・暗証番号・納税用確認番号等を登録しインターネットで送信します。
◎所得税申告書の作成
e-Tax(電子申告)ソフトや国税庁ホームページの申告書作成コーナーを利用して所得税確定申告書を作成します。
◎カードで電子署名
上記で作成した申告書データに電子署名をします。
パソコンにカードリーダを接続し、その上に住民基本台帳カードを置き、カードの暗証番号を入力しe-Tax(電子申告)ソフトの署名ボタンをクリックします。
◎データの送信
上記で、電子署名したデータをe-Tax受付時間内に、インターネットで送信します。
◎添付書類の送付
最後に、医療費控除の領収書や源泉徴収票などの添付書類を所轄税務署へ郵送若しくは持参します。
電子申告制度は、「e-Japan重点計画―2002」に基づき、税の分野において構築されたものですが、平成16年11月末現在のe-Taxの利用件数は約3万件で、全申告等の5%である130万件達成(平成18年度目標)にはまだまだ長い道のりがありそうです。
実際に体験してみて以下の通り感じました。
・電子証明書の取得に時間がかかる。
最近は、住民基本台帳カードと電子証明書を即日交付する市区町村もあるようですが、私の場合(昨年)は、申請から取得まで約半月を要しました。
・ソフトウェアのインストールの問題点
3つのソフトウェア(CD)を順番どおりパソコンにインストールしなければなりません。(パソコンに慣れていない人には苦痛)
・申告に必要な番号(セキュリティのため)が多い
利用者識別番号・暗証番号(e-Tax)・納税用確認番号とカードの暗証番号の4つが必要。
・申告書作成画面
e-Taxソフトよりも、国税庁ホームページの申告書作成コーナーのほうが使いやすい。ただし、作成できる帳票に限りがある。
・受付時間が限られている。
ユビキタスを目指しながらも現状は月~金は9時から23時まで、日曜日は9時から21時まで、土曜日は休み。
・添付書類の送付
医療費の領収書などは、税務署へ郵送または持参しなければならず、二重手間となる。
以上のように、e-Taxは、その性格に鑑みセキュリティが重視されているため現在のところ準備や初期設定に時間がかかり、またe-Tax利用者にとっての利便性が少ないため普及が遅れているのではないでしょうか。
お隣の中国では、電子申告利用者に税額控除のような特典を与えているとか。
日本の場合は、「課税の公平」の観点からそのようなことはしないそうですが。
今後、普及を目指すのであるならば、初期設定時の簡便性・作成時の操作性・送信時の利便性(ユビキタス)など、さらに向上させていく必要があると考えます。
■執筆者プロフィール
小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、AFP
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。