最近の調査によると、大手企業の来年の新卒採用状況は、約40%の企業が採用を増やし、残りの60%のほとんどの企業も今年並みの採用を計画しているとあります。団塊の世代の退職に備えて、技術伝承や生産現場の人員確保の目的のためのようです。中小企業においても人の採用は重要で各社いろいろな取り組みをしていますが、最近聞いた事例をご紹介いたします。
設備機器メーカーのA社の社長は、従来から大学生や高校生のインターンシップを積極的に受け入れていました。今年は、それに加えて、新分野進出のために、技術者の確保をねらって、はじめて就職情報企業に求人の依頼をしました。求人のためのホームページへの掲載、会社PRのアドバイスなどをしてもらい、今年は、技術系の学生をたくさん採用できたと喜んでいます。例年よりはるかに応募してきた学生が多かったため、じっくりと自社にあった学生を選考することができたようです。社長は、費用はかかったけれど、それに見合った効果が得られたと、満足しています。
自動車の大好きなB社の社長は、面接時に車の運転について質問しています。
B社は工作機械を使って機械加工を行っているのですが、機械の操作と自動車の運転には関連性があると考えているとのことです。例えば、自動車の運転では状況に応じて、ハンドル、アクセル、ブレーキを操作しなければなりませんが、これらをスムーズに行える人は、工作機械を扱わせても能率よく作業する傾向があるとのことです。また、工作機械は高価な機械なのでぶつけたり、操作ミスをしたりして機械を壊すと大変なことになるのですが、自動車で事故を起こしたことのない安全運転をする人は、機械操作でも慎重に行うとのことです。逆にこの会社の面接を受けた人は、B社の社長は自動車が好きで、機械にこだわりを持った人だということが分かり、会社の個性が分かるのではないでしょうか。中小企業は社長の個性が大きく反映されているので、応募者が自分にあった会社かどうかを判断する1つの材料になりそうです。
小物板金部品製造のC社は品質管理を重視していて、不良率が少ないことをセールスポイントにしています。工程内での品質の作りこみ、検査工程での徹底した検査を実行しています。この会社では、採用試験の1つに小物部品の数を数える課題を出しています。具体的には、100個の部品を10個、20個、30個、40個の4つのグループに分けさせるのですが、実は、最初に用意した部品は100個ではなく101個にしておきます。そうすると、10個、20個、30個、40個に分けると1個あまってしまいます。面接者の反応は、何度か確認で数えなおして1個余っているという人、適当に分けてできましたという人などいろいろあるそうです。
部品の数を数え、確認するという基本的な課題ですが、検査を重視するC社に向いた人を採用するにはマッチしていると思います。
中小企業では、大企業のようにすべてに秀でた人を採用することは、なかなか難しいのです。しかし、1つの分野でもきらりとひかる人を採用することは可能です。自社の個性、将来の方向性にうまく合った人材を確保するために、各社ともユニークな試みをしているようです。
■執筆者プロフィール
洲崎章弘(すざき あきひろ)
洲崎鋳工株式会社 取締役 http://www.suzaki.co.jp
有限会社キララ21 取締役 http://www.kirala21.com
中小企業診断士、ITコーディネータ、ITCインストラクタ
「有限会社キララ21」は、ハードディスク完全消去ソフト「ピーマン」、CD-ROM駆動ファイルサーバー「だいこん」などの野菜ソフトシリーズを開発販
売している。http://www.kirala21.com