私はITベンダーでシステム開発業務に携わっていますが、ここ数週間での当社の見積りレビュー案件のうち件名で判断した場合、3割程度が「~システム再構築」というものが見受けられます。私自身も、ついこの間まで、ある大企業の事業部門のシステム再構築の立ち上げフェーズに関与しており、また、現在も、中堅企業のシステム再構築にむけた業務コンサルフェーズのマネジメントを担当しています。
再構築の理由としては、既存ハードウェアのリース切れ、ソフトウェアプロダクトの保守打ち切りのようなどちらかといえば単純なものや、経営のスピード化や収益改善への対応等、トップの意志を反映したものがあります。
このような再構築となると現行規模の大小はあるのにしても、インフラ、プロダクト、アプリケーションの変更はもとより、運用の変更やシステム移行に対する作業量の増加など億単位の投資が必要となり、開発期間も長期にわたるものも多くなります。それは、東京の品川のビル群にように、今まで、いろいろなシステム構築を繰り返して肥大化・複雑化した都市のようなものであり、いざシステム改善ましてや再構築になると莫大な費用と期間がかかります。
また、それとともに、安価になったハードウェアや新しい開発ツールや手法で必要なところだけ短期間に開発する部分最適化の開発スタイルが続けられてきました。
そのため、経営側としては、
(1)戦略の実施に開発が間に合わない
(2)投資のわりに効果が高くない
(3)あるべき姿のシステムになっていない
情報システム側としては
(1)部門ごとにシステムがバラバラ
(2)つぎはぎだらけのシステム
(3)肥大化・複雑化して担当者しかわからない
といった経営側と情報システム側とのギャップが常に存在している現状です。
このような状況で、EA(Enterprise Architecture)の考え方が注目をされています。この概念をみてみると、長年、システム開発に携わってきたものにとっては、「開発管理」、「標準化」、「システム管理」に、「ITガバナンス」を目的とした「システムの可視化」と、「IT調達管理」を追加したようなイメージに思えます。
EAの中で、提唱されているようにビジネス、データ、アプリケーション、技術という視点からシステム全体を俯瞰し、現行システムの課題の分析により、次期システムのあるべき姿を描くことが必要になっています。これにより、部分的な再構築を実施しても、全体として最適化が保つことを目指しています。
作業としては、現行システム全体の可視化と分析、およびその結果から次期システムのあるべき姿を可視化することになります。ただ、現場サイドでは、まだまだそれを導入していくには、組織の意識の問題や、地道な技術サイドで活動が必要となっています。
現行を可視化するのは、既存のドキュメント類(業務フロー、システム機能仕様書、DB定義書等)をモデリング手法のもと、モデル化を実施していきますがまだまだ、効率よく実施できないのが現状のようです。現行のモデル化でかなりの工数を費やすことになります。そのため、その後の開発におけるコストダウンや短納期化が見えてこないと、組織としての取り組みがスローダウンする傾向があります。
そのような活動を後押しするのが、ITコーディネータと言えるわけですが、まだまだ私自身、力不足はいなめない状況であり、効果を見える形に具現化し、アピールすることを地道に実行していくことが、企業システムのあるべき姿を実現できることにつながると思い、日々精進していきたいと思っています。
■執筆者プロフィール
西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネージャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
Norio_Nishida@cii.csk.co.jp