今やインターネットオークションは買い物をする時の一つの選択肢として定着しつつあります。
国内のインターネットオークション市場を見ますと2006年には約6,400億円にまで成長すると言われています。
オークション利用者にしてみても、日本最大のオークション市場「Yahoo!オークション」だけで現在約500万人が参加しているそうです。
オークションを利用する人達は大半が「買い手」として利用しています。もちろんビジネスとして利用している方もいますが、ほとんどが一般の買い手です。
ですが、近頃「出品者(売り手)」側に一般の方、特に主婦の方々が多く参加し、しかもかなりの好成績(売り上げ)を上げています。
これまで、一般の方々の出品は、身の回りで不要になった物を再利用すると言った目的で“単に物を出品する”といったことが多かったのですが、近頃の主婦はプロの営業マン顔負けの「いかにしてこの品物に興味を持ってもらうか」「いかに高く買ってもらうか」更には「いかにして今後も引き続き自分の品物を買ってもらうか」の工夫が施されています。
1.「いかにしてこの品物に興味を持ってもらうか」
ビジネスではマーケティングやPromotionといった部分ですが、彼女達は今自分たちの間でどういった物が流行っているか、どういう物が欲しいのかを研究し、自分たちで出来ることの中から工夫し、出品しています。例えば、使わなくなった有名ブランドの布生地を使ってペット用の小物を作ったり、人気キャラクター入りの生地を使って子供服を作ったりして、ブランドイメージを利用しつつオリジナル感を漂わせて興味をそそっています。また最近ではオークションサイトに載せる画像にも手が込んでいます。
2.「いかに高く買ってもらうか」
これには、ターゲッティングがきちんと設定されています。
例えば、0歳から1歳までの赤ちゃんがいる主婦向けや、20代から30代前半で、買い物に行く暇が無いほど忙しく働いているOL向けなど、具体的に的を絞っている場合が多いようです。
それは、設定したターゲットのお財布状況やお買い物感覚を熟知しているので、「この金額までなら出せる」や、「お買い得感を漂わせる」価格が設定できるからです。
また、上記1.にも関連しますが、品物の紹介画像に力を入れています。例えば他の出品物と綺麗にコーディネートした画像を載せ、複数の品物をセットで落札して貰うように考えたり、安い物を高級品に見えるようにアレンジしたり、1円でも高く、1つでも多く売れるように工夫しています。
3.「いかにして今後も引き続き自分の品物を買ってもらうか」
彼女達は、落札者の満足と信頼感を高める努力を惜しんでいません。
具体的には、出品物の情報は出来るだけ細かく丁寧で且つ親切に説明し、傷や不具合箇所も隠さずに記述する。更に、単に商品説明だけでなくその品物の利活用方法や、関連情報も合わせて提供する。
そして、落札後のフォローもしっかり行う。(しかも迅速に)
・落札御礼のメール
・入金確認メール
・出荷メール
・落札品と関連した他の出品物の紹介メール 等
また、品物の梱包にも気を使っています。可愛い包装紙や袋で心を込めて丁寧に包装し、お礼のメッセージカードの同封も忘れない。
ここまですれば、落札者からは良い評価を受け、信頼関係が構築される為、「また次回もこの人から商品を買いたい」「多少は高くてもこの人の品物なら安心」といったことになり、リピートにつながる。更にそれが口コミ等で広がり、他のお客様までも付いて来るといったことになっています。
ここで触れたことはほんの一部ですが、彼女達はビジネスについて専門的に学んだわけではなく、日常の生活の中で“こんなことをされたら嬉しい”と思ったことを実践しているだけだそうです。
昨今ビジネスにおいて私たちが見失ってしまっていることや、見習わなければならない商売の基本的なことがたくさんありそうですね。
■執筆者プロフィール
新田 実(にった みのる)
ITコーディネータ補、ISMS審査員補
mailto:mino_nitta@ybb.ne.jp