エステティック業界の経営とIT活用について/杉村 麻記子

エステティック産業は、健康や美しさへの志向の高まりを背景に、4000億円規模の市場となり、今後も成長が見込まれます。
今回のメルマガでは、エステティック業界における経営とIT活用について考えてみたいと思います。

1.エステティック業界の概要
 エステティック業界は、大手などの法人サロンが6割以上を占めている一方で開業間もない個人サロンもあります。
 訪問販売法、割賦販売法が適用されていますが、誰でもがサロンを開業でき、エステティシャンとなれます。現在でも一部のサロンでは、消費者のトラブルも発生しています。業界全体として契約やサービス内容についていかに信頼を得るかが課題といえます。

2.エステティックサロンの経営について

(1)マーケティングと営業活動
 日本エステティシャン協会によると、エステティックはスキンケア、ボディケア(手・足のケアを含む)、脱毛、メイクアップ、ネイルケア(ネイルアート)の6 種類に大別されます。大手のサロンでは、スキンケア、ボディケア、脱毛を中心にフルメニューで多店舗展開しています。また個人経営では、フェイシャルなどのスキンケア、ネイルケアなどそれぞれの特色を出したサロンを構えています。
 新規顧客の獲得方法としては、折り込みチラシやタウン誌、フリーペーパー、女性向け雑誌、インターネットなどがあります。特定地域限定のサロンでは、折り込みチラシやタウン誌が有効です。チラシには、来店促進のための体験コースや格安キャンペーンなどを紹介しています。個人のサロンなどは、利用される方の不安を取り除くために、わかりやすいサロンの紹介が必要です。
(もちろん誇大広告はだめです。)
 また実際に利用された方の紹介(口コミ)は、とても有効です。紹介してもらうためには、紹介サービス特典をつけることはもちろん、実際に利用された方の満足度を高めることが必須です。
 顧客満足度を高めるためには、サービスの品質とリーズナブルなコストを維持します。サービス品質を向上するためには、施術に使う機器(道具)の性能だけではなく、エステティシャンの技術・知識・接客マナーなどが重要です。
 いったん顧客となった方であっても、一定期間の施術が終了するとその後は、来店しなくなります。ダイレクトメールや電話フォローなどで、新サービスやキャンペーンを紹介して再来店を促し、既存顧客を維持・拡大します。

(2)売上げ拡大のポイント
 売上=客数×単価です。ただし、エステティックの料金は、一般的に高くてわかりづらいという印象があります。むやみやたらに様々な商品を売りつけるだけではお客様が警戒して、離れてしまうことになります。
 一人あたりの売上げを増やすためには、お客様の美への追求を総合的にサポートすることです。それぞれの人の要望にあったサービスが何であるかを見極めてエステでの施術だけではなく、ホームケアも含めた提案をします。具体的には、美顔などのスキンケアでは、化粧品の販売と家でのマッサージ方法を紹介します。
またボディ(痩身)では、健康食品やボディークリーム販売だけではなく、食事療法、ストレッチ体操などをあわせて紹介することで、シェイプアップの効果を加速し、体感してもらいます。これによりお客様の満足度も向上します。

(3)機器導入(設備投資)について
 エステティックの機器には、スキンケアやボディケア用の低周波機器、高周波機器、超音波機器、吸引機器、スチームや、電気脱毛器、レーザー脱毛器などがあります。それぞれの機器は、リハビリテーション医学などに利用されている
「理学療法」機器からエステティック用に応用開発されたものが多いようで、機器の導入にはそれなりの投資が必要です。大手のサロンでは最新機器を導入してPRすることがあります。新旧の機器が混在する場合は、最新機器を利用する時はサービス料金を高く設定するなどの対応をしています。
 最新機器の導入が難しい個人や中小のサロンでは、手業やカウンセリングなどのきめ細やかな対応でお客様の満足を獲得することが求められます。

(4)エステティシャンの教育、育成
 前述したように、エステティックのサービス品質は、エステティシャンの技術知識、接客態度等に係わっています。彼女たちの教育、指導は非常に重要です。
現在日本にはエステティシャンの国家資格はないものの、主要業界団体による認定校制度があるほか、各国団体と提携して国際資格の取得などが可能になっています。これらを活用しながらエステティシャンの教育をすることで施術のトラブルを防いだり、お客様へのサービスの向上に努めます。
 大手のサロンでは、エステティシャンの評価項目として、資格の有無や社内試験の状況(接客マナー)を設定しているところもあります。

3.IT活用について
 エステ業界で活用できるIT(情報システム)としては、以下のようなものがあります。

(1)顧客管理
 既存顧客の維持拡大のために、そのお客様がいつご来店されて、どのような施術を受けてきたのかを管理します。またお誕生日プレゼントやキャンペーンなどの案内をDMで送るときにも使います。
 大手のサロンでは、全国に支店があり顧客管理とあわせて契約管理を行い、支店間で情報をやりとりしています。

(2)ホームページ
 エステティックサロンは、巷にお店があふれています。特に中小のサロンではどのようなサービスをしてくれるのかがお客様にはわかりません。そこで、インターネットのホームページを作成すれば、自分のサロンの特徴をお客様に紹介することができます。また来店促進用の割引クーポンなどをつけているサロンも多数あります。

(3)予約管理
 どのお客様が、いつ、どの施術を予約されたかを管理します。また施術の機器についても同様に管理します。機器の台数に制限があるので、せっかくご来店いただいたのに、使えないということがおきないようにします。
 またお客様からの予約受け付けについて、電話だけではなく、インターネットや携帯電話(サイト)等を使えるようにすると、便利になりお客様サービスが向上します。

(4)仕入・在庫・販売管理
 施術で利用する化粧品や健康食品などについては、その仕入や在庫、お客様への販売状況を管理します。商品点数が多い場合などはシステムによる発注、在庫管理を行い生産性の向上、欠品や不良在庫の防止に努めます。

もちろんこれら以外にも、規模拡大に伴って、会計、人事・給与等の情報システムが必要となります。

今回は、エステティック業界における経営とIT活用について紹介しました。
エステティックは女性の世界ですが、最近は男性専門エステも登場しました。
「自分磨き」「癒し」「セレブ」などのキーワードで今後もこの業界は発展していくでしょう。中小サロンが生き残るためには、大手にはない特徴を出していくことが重要となります。


■執筆者プロフィール

杉村 麻記子(すぎむら まきこ)
 中小企業診断士、ITコーディネータ
 mailto:m.sugimura@nifty.com