先月に中学校の同窓会が開催され、参加してきました。高校の同窓会にはほぼ毎回参加していたのですが、中学校は今回が初めてで、30数年ぶりの再会となったわけです。高校の同窓生はなぜか、公務員や先生、大企業の会社員が多いのです。中学校はそういった人もいましたが、企業経営者、自営業者もいて高校より職種にバリエーションがありました。
ただ、大企業のそれではなく、中小規模の経営に携わっている人ばかりで、日々の運営には苦労されているようでした。世にいう「勝ち組」には、なかなか入れない立場の人達です。
そういった厳しい環境においても、最近のIT化については、少なからず取り組む必要を感じている人が大半でした。その話の中で、取引先の流通業者が、バーコードに代わるものとしてRFIDなるものを検討しているとの話題がでました。
RFIDとは、Radio Frequency Identification の略で、電波を利用した認証(認識)技術の総称です。流通業界ではバーコードに代わる商品識別・管理技術として研究が進められてきましたが、それに留まらず社会のIT化・自動化を推進する上での基盤技術として注目が高まっています。
昨年度には、経済産業省により事業分野ごとに実証試験が実施され各分野の報告書が作成されています。実証試験の事業分野は、
1)建設機械業界・産業車両業界・農業機械業界
2)出版業界
3)家電製品業界、電子部品・電子機器業界
4)医薬品業界
5)百貨店
6)物流業界
7)レコード業界、DVD・CD 業界
の7つとなっています。
事例としては、大手百貨店の婦人靴売場での活用により、接客時間、顧客の待ち時間の減少、売上向上への効果が確認されています。
RFIDの特徴として以下の2つがあげられます。
(1)認識対象物に接触することなく非接触で認証が行える。
(2)非接触認証を複数の対象に対して同時に行える複数同時認証が可能。
従来、使用していたバーコードとの違いですが、バーコードは認証時に見えていないといけないわけですが、RFIDでは、光学的な処理ではなく、電波による認証処理を行うため、認証対象となる IC チップが見えている必要がないため、読み取り装置(リーダー・ライタ)をかざすだけで認証作業を実施できます。
また、バーコードの場合、認識する商品を1個1個手にとってバーコードスキャナでスキャンする必要がありますが、RFIDでは複数同時認証が可能であるため、買い物かごの中の商品情報を一気に読み取ることも可能です。
上記により、スーパーのレジでは、オペレータが1個1個をスキャンすることなく、リーダー・ライターのある台におくだけで、精算が完了することが可能となります。
この技術は、レジの作業の軽減だけでなく、受発注業務の簡素化、商品のトレーサビリティへの応用、生産から販売までのSCMシステムの精度向上など、その応用範囲は広範囲に及びます。
一部、一般化され使用されているものとして、公共交通機関のカード型定期券(Suica、ICOCA) が成功の代表例です。
ただ、現時点における課題として以下のものがあります。
1)経済的な課題
製品にICタグを設置する必要がありますが、そのコストが最も安いもので10円以上することです。数円にした場合でも、製品にそのコストを上乗せしたコストをだれが負担するかということも問題です。
2)技術的な課題
電波の持つ物理的性質に強く依存するものであるため、電波の持つ限界を超えることはできません。金属類にICタグを設置した場合、通信性能は低下しますし、水気が多く存在するような環境下も同様です。
3)標準化に関する課題
ICチップの種類、通信プロトコル、ICチップに記憶するデータ体系、その利用方法等について標準化が不十分です。標準化されていないものに対して、企業は投資できません。
4)プライバシーに関する課題
セキュリティ面の機能を削ってしまっているために、プライバシー侵害の危険性を孕んでいます。
5)環境に関する課題
バーコードは紙に印刷されたものなので環境面には影響しませんが、RFIDの場合、ICタグなどは金属で作られているため、大量に廃棄される場合の、環境への影響が懸念されます。
ただ、この技術は、課題が徐々に改善され、さまざまな分野に進出してくるものと予想されます。既存の基幹システムへの連携なども今後、発生してくると思われます。
■執筆者プロフィール
西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネージャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
Norio_Nishida@csk.com