初夢は、ITコーディネータ成熟度の磨き/恩村 政雄

 新年明けましておめでとうございます。
 皆様には輝かしい新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 年間の計は元旦にあり、といいますが既に計画を立てられたでしょうか。
 私の計画(夢)は……。

 昨年12月19日朝日新聞の、のクラウス・ライジンガーさん(国連事務総長特別顧問)の記事が目につく。
「企業にとって、さまざまな問題が扉をノックするまで待つのではなく、事前に想定していればいるほど社会との摩擦を減らせる可能性は高い。
 法的リスク、財務的リスクも小さくできるだろう。
人材面でも、責任ある企業とみられていれば、従業員にやる気を持たせ、企業の求心力を強化できる。社会が成熟するほど、人々は単に製品を買うだけでなく、製品の背後へ目を向け、その企業が責任意識の強い企業かどうかを問うものだ」

 この言葉は、これからますます企業の社会的責任が求められ、ITコーディネータにとっても、IT経営がなぜ必要かを経営者に問う絶好の機会にもなり得る。

 翻って昨年の10大ニュースをみれば、万全に講じられたIT化に支えられ「安心」「安全」と思われていた日常生活が大きく揺らいだ年でもあった。
 曰く、
 ATSで二重・三重に防御されていたと思っていた列車の安全性への疑問、震度6・7にも安全な建築物構造ソフトのいとも簡単な修整可能への不信、クリック一つで、わずが16分足らずで400億円もの損害を出した証券取引所システムのセキュリティ、等々、昨年賑わした事件の多くに情報システムが少なからず大きな役割を担っている。

 物事には必ず「光」と「影」がある。
 企業の情報システムの取り組みも、経済性を強調したIT化の「光」の部分にのみスポットがあてられ、人間ならば気づく筈の常識外・想定外のことにも、手順通りだからといとも簡単に対応してしまうIT化の「影」の部分が置き去りにされた感を強くする。

 昨今、経営成熟度、情報成熟度など「成熟度」が喧伝されている。
 IT化に社運をかけ先端ハードやツールを導入しても、そのハードやツールの得失を理解し、正しく使いこなす風土や仕組みが根付いていないと、一部の知識者に任せきりとなり気がついた時には「こんな筈ではなかった」「想定外、常識外で考えてもいなかった」と経営者が記者会見で謝罪・引責せざるを得なくなることも現実のこととなる。

 ITコーディネータは「経営と情報」が判る人材と企業からは理解され、実体的に活動をしているがこの理解に応え得るように自己成長に投資しているのだろうかと自問自答する。
 あるべき姿に固執し、経営貢献度合を度外視した過剰投資、まずはツールありきのIT化説明、情報リテラシー度を無視した先端技術の推奨、IT化万能と、人間の判断・チェックの仕組みを排除したシステム設計、3文字への過剰同調 等々、

 IT化社会で企業が問われている社会的責任と同じく、ITコーディネータの社会的責任もこれからは厳しく問われてくる。

 ITコーディネータの使命とは何だろうか。社会での役割とは何だろうか。
 その使命や役割を遂行するための「知識習得、ノウハウへの磨き」、相談企業に半歩先を見据えての「気づき」「やる気」を惹起させるコミュニケーション力の修練、口は小さく、耳は大きく、相手を慮った謙虚な姿勢、人格的成長への努力、 等々
 そのために何をなさねばならないか、脚下照顧して自身の成熟度に磨きをかけることを今年のテーマとして追求しなさい、とIT大神(おおみかみ)に叱責された時に目が醒め冷や汗いっぱい。……私の初夢でした。


■執筆者プロフィール

恩 村 政 雄
 OBCC主宰(経営コンサルタンツ)
 NPO法人ニュービジネス支援センター 理事長
 E-メール: obcc.onmura@nifty.com
 URL: http://www.npo-fc.jp