モノからコトへ ~温泉地のマーケティング戦略より/杉村 麻記子

 ◆大分の温泉地
 先日大分に行く機会がありました。宿泊したのは空港バスなどアクセスのよい
別府温泉です。帰りの飛行機まで少し時間があったので、タクシーで市内観光
(10年ぶり)を小一時間ほどしました。
 タクシーの運転手さんが冒頭に「別府温泉は景気が悪いですね。大分だと湯布
院や黒川温泉なんかは流行っているのですが」との嘆き節でした。私自身はアク
セスの良さ、豊富な温泉、リーズナブルな価格など別府温泉に満足をしたのです
が・・。両者の違いは何なのでしょうか? 旅館や施設などインフラ面以外にも
何かありそうです。
 今回のメルマガでは少しソフトに、同じ大分にある温泉街の人気を分けている
要因を考察します。


◆別府温泉と湯布院の比較
 さて、みなさんはこれらの温泉街を訪ねられたことはありますか?
 それぞれの温泉のPRポイントを列挙してみると以下の通りです。

別府八湯 ~世界に誇る温泉街
・泉質数世界一(世界一の源泉数(2800カ所)と日本一の湧出量(1日約14万トン)
・別府八湯(八つの温泉地がある)
・地獄巡り(コバルトブルーの海地獄、赤色の血の池地獄、熱泥の坊主地獄等)

湯布院 ~湯布院の風と森へようこそ
・自然とのふれあい、故郷に帰ったような気持でくつろげる
・由布岳をのぞむ景観、やまなみハイウェイ、街の佇まいを満喫できる
・その土地の暮らしそのものを観光とし、住む人々の情の厚さを体現してもらう

 プロジェクトXなどでご覧になった方も多いかもしれませんが、湯布院町はか
つてバブル期にリゾートマンション建設計画があったそうです。町の人々がそれ
を作らせないことで町並みや暮らしを守り、今や日本有数の温泉としてのブラン
ドを確立しました。


◆モノからコトへ

 両者の違いをマーケティングの視点からみると、「モノからコトへ」のシフト
です。
 別府温泉のPRは、源泉数や湧出量、別府八湯等「~がある」といったモノ志向
です。一方、湯布院のPRは、くつろげる、満喫できる、体験できる等「~ができ
るコト」を提案しています。【特徴を明らかにするために少し誇張しています】
 消費者の視点はモノの「所有価値」からそれを使う(体験)することで得る
「使用価値」にシフトしてきているといわれています。感動を体験できる、心を
充足できるコトに対して、高い付加価値を見いだし対価を支払うのです。
 モノやサービスだけを念頭においた従来のマーケティング戦略では、お客様に
満足いただくことは難しくなっています。


◆自社のマーケティング戦略は?
 「モノからコトへ」の考え方は、製造業においても重要なことです。自社の技
術で何がつくれるか? だけではなくて、自社の技術を使ってお客様(企業・生
活者)になにを実現できるのでしょうか?
 モノ(商品)作り同様に、その商品が必要になる機会や商品を使う生活シーン
(もしくはビジネスのシーン)を顧客に提供することがポイントです。
 みなさんも自社のマーケティング戦略を立てる前に、一度人気商品やサービス
を「モノからコトへ」の視点で考察してみてはいかがですか?


◆追記
私が湯布院を訪れたのは10年以上前のことです。最近は、人気があるゆえに開
発が進み、湯布院の象徴である金鱗湖周辺には都会的なレストランや店がにぎや
かに並んで風情をなくしているという声もあります。(モノへの逆戻り?)
また別府温泉では、古くから湯治場として栄え、長期滞在のプランなどもあるよ
うです。(モノからコトへのシフト)
大分はとても大好きな所です。それぞれの温泉地の発展を祈念しております。


■執筆者プロフィール

 杉村麻記子(すぎむら まきこ)
 ITコーディネータ 中小企業診断士
 mailto:m.sugimura@nifty.com

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