18年度税制改正と同族会社の対応/小林 由香

 5月1日より新会社法がスタートしました。
 新会社法においては、従来の最低資本金制度が撤廃され、資本金1円でも会社
を設立できるようになりました。また、譲渡制限会社(株式の譲渡に一定の制限
を設けた会社。非公開会社)であれば、株式会社でも取締役は1名でよく、監査
役の設置は任意となりました。取締役・監査役の任期も、譲渡制限会社では、定
款に記載することにより10年まで延ばすことができるようになりました。
 このように法人の設立・運営が容易になったのを受け、個人事業者が実質一人
会社を設立するという、節税目的の法人成りを抑制する観点から、18年度税制改
正で、いわゆるオーナー会社の社長の給与の損金算入方法が見直されました。
 つまり「特殊支配同族会社」の「業務主宰役員」(一般的にはオーナー社長)
に対する給与のうち給与所得控除(※)に相当する金額は、法人所得の計算上、
損金算入ができなくなりました。(法人所得に給与所得控除分を加算するという
ことです。)
 (ただし、同族会社の所得等の金額(法人の所得の金額と「業務主宰役員」の
報酬の合計額)の過去3事業年度の平均額が年800万円以内である場合などは、
この損金不算入の規定は適用されません。)
 (※)給与所得控除とは、所得税・住民税の計算上、給与の年間収入金額から
控除することのできる金額です。
給与所得控除額は、給与の収入金額に応じて、次のようになります。
給与の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30% +  180,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20% +  540,000円
6,600,000円超 10,000,000円以下 収入金額×10% + 1,200,000円
        10,000,000円超 収入金額×5%  + 1,700,000円

 

 ●法人成りによる節税効果
法人成りとは個人事業者がその事業を法人組織(会社)に変更し、継続して事業
を行うことを言います。
 そうすることにより、法人が支払ったオーナー社長の役員報酬について、法人
の所得計算段階で損金(経費)に算入し、かつ個人の所得計算段階で給与所得とし
て給与所得控除の適用が受けられます。
 例えば、個人事業における所得(事業所得)が1,000万円の事業者が、法人成り
し、その法人から役員報酬(給与)として1,000万円を受け取った場合、給与所
得控除額220万円を差し引くことによって所得を780万円にできるため、所得税、
住民税、個人事業税をあわせて約100万円程度の節税ができる場合もあります。
 
●特殊支配同族会社とは
「特殊支配同族会社」とされるのは(1) (2)の両方に該当する場合です。
(1)発行済株式総数の90%以上をオーナー一族が保有している。
(2)常務役員の過半数がオーナー社長および一族である。
 ただし、以下の場合は除く。
・その同族会社の所得等の額とオーナー社長の給与の額の合計額の直前3事業年
 度における平均額が年800万円以下。
・上記及びその平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ社長給与の占め
 る割合が50%以下。

●「特殊支配同族会社」にならないために
(1)持ち株割合
特殊支配同族会社とされるのは、発行済株式総数の90%以上をオーナー一族が保
有する場合ですので、他人に発行済株式の10%超を保有してもらうと対象からは
外れます。
この場合、譲渡や贈与が考えられますが、譲渡の場合、株を譲渡した人は、譲渡
時の株価(時価)が取得時の株価を上回る場合に、その差額に対し所得税・住民
税が課せられます。
また、贈与の場合、株を貰った人は、その株価から110万円(贈与税の基礎控除額。
一人一年当たりの額)を引いた残額に贈与税がかかります。
従業員持株会を作ってそちらに株式を移動させることも一つの対応策となるでし
ょう。

(2)役員構成
常務に従事する取締役の半数以上をオーナー一族以外から選任します。
この場合、常務に従事する取締役ということですから、名義だけの役員や非常勤
の役員を選任しても対象になりません。
ただしこのようにした場合、会社運営上、いわゆる「お手盛り」はしづらくなり
ます。

上記(1)または(2)の要件を満たせば、従来どおり、法人化による節税の可能
となります。
但し、法人組織にする目的は、節税のためだけではありません、法人化し、経営
状況を開示し、企業内容の充実化を諮っていくことにより信用力を向上し、顧客
や人材の確保、資金調達を有利にすることが本来だと考えます。
法人化を検討中の経営者の皆様は、幅広い観点から判断をしていただきたいと思
います。


■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。



公式Facebookページはこちらから

<いいね>をクリック!