今年は、冬季五輪、野球とサッカーの世界選手権が開催され、テレビにくぎ付けになる日々が続いていますが、熱しやすくさめやすいといわれている国民性の次なる燃える対象はなんでしょうか。阪神優勝ではもう燃えない?
ちょうど3年前のこのコラムで、阪神フィーバーのことについて触れましたがその時は18年ぶりの優勝で、大いに盛り上がりました。
そのときに、組織の成熟度のレベルをあらわすモデルとしてCMM(Capability Maturity Model)についてご紹介をしたことがあります。手前味噌ですが、私の所属する組織がその翌年に最上位レベル5の評価を得ており、そのようなマネンジメントモデルに基づく組織運営が取り入れられています。
従来は、ITベンダでの取り組みが主なものでしたが、昨今、複雑化したITプロジェクトにおいては、ユーザー側においてもプロジェクトマネジメントを導入することが必要になっています。大手企業においては、組織としてPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置して、プロジェクトのさまざまな問題に、対応しています。ただ、中小、中堅企業においては、まだまだ、メーカーやベンダーまかせで、極端な例でいえば、高級車を購入するかのように、それなりのお金をだせば、いいものを提供してくれると思われている役員、幹部の方もいないわけではないです。
SIベンダにおいても、ユーザーはやりたいことが明確になっており、システムの機能要件や、運用要件を詳細に説明できる要員、体制があるという前提で、開発をしがちです。前述の、システム構築を自動車の購入に例えるようなユーザーでは、間違いなく要件は不明確で、機能要件の説明などできる要員はほとんどいないのが現状だと思えます。あくまでユーザーとしては、システム化投資により「業務の効率化」、「経営戦略上の効果」を求めるものですが、ややもするとシステムを構築することが、目的になってしまう傾向があるようです。
ベンダとしては、与えられた予算(受注額)の範囲において、スケジュールやスコープをユーザーと調整し、折り合いをつけるのが第1であるため、システム構築後の投資対効果にはあまり目がいかない。そのため、ユーザー側がシステム化のメリットを強調すると、専門的な言葉を続けて、あまり口出しはしないようにコントロールするのが常套手段になっているかもしれません。(意識していなくても)
では、ユーザー側としてしては、どのようなことに留意すればよいのでしょうか。
1つは、前述のようにユーザー側においても、システム化投資のメリットを出すためのマネジメントを実施し、ベンダ側も巻き込んでプロジェクト全体としての整合性がとれるような運用を可能にすることです。
もう1つは、システム開発の完了が終わりでなく、それを何年も運用し続けることがユーザーのスコープとなるようにプロジェクトを推進することです。
上記のような活動を支援するために、前述のPMOという組織を確立することが必要なります。
従来のPMOの役割としては、
(1)品質管理
(2)トラブルプロジェクト支援
(3)人材(PM)の育成
(4)構築のための導入技術管理
(5)調達管理
がありますが、企業の組織の成熟度によって、その役割レベルも変化させる必要があります。たとえば、PMの事務的作業(報告書データの作成、会議の調整など)を支援することから、複数プロジェクトの実施の優先度の判断を行うなど、その組織のマネジメントレベルを考慮して機能を考える必要があります。
■執筆者プロフィール
西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネージャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
Norio.Nishida@csk.com