約1ヶ月間にわたり繰り広げられたドイツW杯も残すところ準決勝と決勝となりました。日本は残念ながら予選リーグ敗退となりましたが、決勝トーナメントでの世界レベルの試合に魅了されて寝不足の方も多いと思います。
今回のW杯を機に約10年ぶりにドイツを訪れ、試合を観戦してきました。ここで体験した対照的な事例から、カスタマーオリエンテッド(お客様基点)について考えてみます。
とても満足のいくサービスを提供してくれたのがDB(ドイツ鉄道)です。
【FIFA World Cup GermanyのOfficial Suppliersの1つです】
今回の訪問では日本vsクロアチアが開催されたニュルンベルグを始め7都市を短期間で訪れました。過密なスケジュールをこなすことができたのは主要都市をICE(日本の新幹線のような特急列車)で結ぶDBのおかげです。
このICEは、日本からインターネットを通じて時刻表検索や座席予約が可能です。出発地から目的地までローカル電車や市電、地下鉄、バスもあわせて乗り換え検索ができるので大変便利です。(日本でも同様のサービスがありますが、ひとつの鉄道会社が他社の交通網も含めて情報提供している事例はないようです)
発着のホーム番号などもわかるので検索結果を印刷して持ち歩けば、乗り継ぎをするときなどドイツ語が不得手でも安心です。利用する旅行者の視点に立った行き届いたサービスといえます。
実際に乗車してみて更に驚きました。乗車した列車の停車駅と発着時刻、各駅での乗り継ぎ列車の発車時刻や行き先を詳細に記述した小冊子が予約席においてあったのです。(このサービスはW杯期間限定) 世界各国からドイツを訪れるサポーターに安心して旅行して欲しいという「カスタマーオリエンテッド」な発想と企業の想いがとても伝わってきました。列車にいた車掌さんは、さまざまな言語を話す各国のサポーターの相談に丁寧に答えていました。(ドイツ語や英語だけでなくポルトガル語も堪能でした)
一方スタジアムではすこしがっかりした体験をしました。入場にあたりテロ等警戒のために入念な手荷物検査がされていました。そのあたりは想定されていたので危険なものは持ち込んでいませんでしたが、手荷物チェックで何故か警備員が某サッカーブランドの上着を取り上げてしげしげと眺めているのです。そして「この上着はスタジアムに持ち込んではいけない」といわれて手荷物預かりとなりました。(受け渡しなど面倒な手続きが必要で観戦を早めに切り上げることになってしまいました。)
よくよく理由を聞いてみると、オフィシャルパートナーとなっている某スポーツメーカーのご意向で、ライバルブランドのウェアはスタジアムに持ち込んではいけないそうです。驚いたことにビールメーカーロゴ入りのズボンをはいたオランダ人のサポーターが、数百人が下着姿で観戦したそうです。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2006/06/18/03.html
この事例は極端にしても、こういった対応はメーカー側の論理であって、一般の消費者の感覚からは、かけ離れています。高いスポンサー料を払っているのだから入場券を買ったお客様でも他社メーカーのものは持ち込ませないということです。メーカー(プロダクト)オリエンテッドな発想といえませんか?
さてこのスポーツメーカーは、W杯宣伝効果でサッカーボールやレプリカユニフォームの売り上げが好調らしいです。私もこのスポーツメーカーのブランドが好きで日本のユニフォームはもちろん購入し、他のグッズも含めて家族で愛用していました。でも我が家ではもうコレクションは増えないでしょう・・・。
これらのメーカーは、W杯に訪れた世界中のサポーターにどんなサービスを提供し、何を伝えたかったのでしょうか? すこし疑問が残りました。
今回は一足早い夏休みでの体験より、すこし柔らかい話題でした。どんなに華やかな舞台であっても、「カスタマーオリエンテッド」の視点を忘れてはいけないと強く感じました。
■執筆者プロフィール
杉村 麻記子
ITコーディネータ 中小企業診断士
ITベンダーにて企業の戦略情報化を支援中!!
e-mail:m.sugimura@nifty.com