雇用型テレワークのすすめ/二上 百合子

 いまさらテレワーク、という方も多いと思いますが、地方都市におきましてはテレワークとSOHOの違いが明確でなく、それほど浸透していないようです。

 本来テレワークとは場所および時間にとらわれずに働くことができる業務形態全体をさし、SOHO(small office home office)はその一つの形態ですが、会社と自宅をネットワークで結んで仕事を行う自営の在宅業務としてのSOHOが注目を集めることで、逆にそれ以外のテレワーク活用の可能性がせばめられているように思います。

 地方都市では、出産・育児・介護等の要因により通勤が困難になる女性等が会社を離れ、在宅勤務を中心として自営で仕事をするSOHOが主となりますが、業種としては、Webコンテンツ制作やシステム開発・プログラミング、CG・ゲーム・ソフト開発、といったクリエイター系、出版・編集や建設関係など有資格フリーワーカー系が主となり、いわゆる手に職を持たない女性はまず資格等を取ることが先決となります。通勤困難者にとっては、資格を取るための時間等を確保することも困難です。また有能な女性が、通勤困難となることで離職を余儀なくされること自体、会社としても大きな損失です。

 自営型のSOHOではなく、雇用型のテレワークをもっと活用できれば、通勤困難者の勤務の幅が広がります。また、企業から見ても、雇用型のテレワーカ導入を人材活用戦略の1つにすることができます。

 雇用型のテレワークを実現・成功する為には、まず経営者層がテレワークの効果について理解し、社内に対してコミットメントを行う必要があります。
さらに以下の3つのプロジェクトが不可欠です。

1.テレワーク導入可能な業務の選定
 セキュリティの問題等により、すべての業務に対してテレワークの導入は不可能です。テレワーク導入により作業効率の向上する業務の選定を行います。

2.テレワーク導入後のワークフローの確立
 既存の業務をそのままテレワークで行うことは不可能であることを認識し新しい仕事のやり方を確立します。

3.社内ルールの確立(コミュニケーションルール、セキュリティルール)
 コミュニケーションの方法や守秘義務等を、社内の共通認識として、ルールを明文化します。 

大企業よりも中小企業の方が、上記のプロジェクトを成功させやすいでしょう。
サテライトオフィスやテレワークセンターといった施設の整備もテレワーク促進の一環だと思いますが、雇用型テレワーク促進の為の社内改革が必要だと思います。

参考:
国土交通省、総務省、厚生労働省及び経済産業省
『THE Telework GUIDEBOOK 企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック』
http://www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/guidebook/guidebook_gaiyou.html


■執筆者プロフィール

二上 百合子(ふたがみ ゆりこ) ITコーディネータ
北電情報システムサービス株式会社 http://www.hiss.co.jp