組織改革と企業規模/山崎 正敏

現在、ある著名な大企業で製品開発プロジェクトに対するコンサルティングを実施している。デジタル機器の組み込みソフトウェアの開発現場である。

ソフトウェア開発だけで約100人のエンジニアが集められている。年々開発規模が膨らんできているという。それぞれのエンジニアは、大企業がゆえに同じ会社でありながら異なる風土をもつ組織群の中で育ってきている。
そんな集団を目標に導くための適切なマネジメントを持っていない。プロジェクトを統括するマネジャーの求心力も小さい。メンバーは様々な方向を向いて開発を進めている。これまでは、技術力のみで何とか製品を産み出してきてきたが、今では相当な量の無駄な・手戻り作業をやってきている。

このプロジェクトの実行状況を色々な視点からチェックを行い、課題を抽出し、優先順位をつけてマネジメントを少しずつ変えていっている。現場は忙しい。
制度を変えたりや手順を策定し導入するのは大変である。
各レベルの管理者やメンバーに気づかせて、心が変わり行動・言動が変わるように小さな努力を重ねている。そうしなければ、変革の推進力につながらないし、さらには、変革の結果が定着することにはならないのである。だから変革の成果が現れるまでには、とても時間がかかる。要は、大企業は簡単には変われないのである。

翻って、同じように約100人の従業員で構成されている企業ではどうだろうか。
社長はおそらくひとり一人の顔と名前がわかる。誕生日も覚えている社長もいる。
そのような社長の求心力は、高いはずだ。従業員には中途採用も多いだろうが、すぐ慣れて、その会社の風土・文化に染まっていく。染まらない従業員が辞めていく。こうして一つの会社風土・文化を共有する集団となっている。この点に既述の大企業との違いがある。

この違いを中小企業は武器にするべきである。大企業よりも早く方向転換できる下地がある。
大企業は、巨大化するビジネスに対応できるマネジメントをどうやっていくかで苦しんでいる場合が多い。大きく変わらなければならない時に、すぐには変われない。

中小企業は、コアとなる技術・製品・サービスに集中して、その質を高めると共に、環境の変化に即座に対応できる柔軟なマネジメントができる会社(「強い骨としなやかな筋肉」を持つ会社)になることだ。今、自社のマネジメントが、変化する外部環境に正しく対応できるのかを見つめ直すことが重要だ。
変革すべきものを見出したならば、即刻、対応していこう。そして求心力のある経営者となるための不断の努力を怠ってはならない。


■執筆者プロフィール

山崎 正敏
オフィス Ajビジネス・プランニング/有限会社 ピーエム情報技術研究所
http://www.ajbp.jp/index.htm

特定非営利活動法人 日本プロジェクトマネジメント協会 理事・関西代表
ITコーディネータ、中小企業診断士、
PMP(Project Management Professional)