メンターの役割について/中川 普巳重

 みなさんは「メンター」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
「メンター」とは「優れた指導者。助言者。恩師。顧問。信頼のおける相談相手」のことを言います。
 では、そんなメンターと呼ばれる存在をお持ちでしょうか?
 メンターとなる人の多くは、職場の上司や先輩であり、仕事やキャリアの“お手本”となる人です。しかし年々、職場の人間関係は変わりつつあり、仕事の関係以外において、いい先輩や上司とじっくり話をする機会が少なくなりました。
 また、女性の社会進出が進む中、お手本にしたいような女性の先輩が社内にいないといった話も耳にします。
 そこで、今回は改めてメンターの役割について考えてみたいと思います。

★メンターの役割は・・・
 ・仕事に対する姿勢や考え方を教える
 ・仕事の楽しさを教える
 ・キャリアパスの参考になる
 ・仕事やキャリアで迷ったとき相談にのる
 ・仕事のチャンスを与える
 ・自分を売り込んでもらう
 ・自分を守ってもらう
 ・様々な情報を提供する
 ・時には厳しいことを言ってくれる
 ・成功体験、失敗体験が聞ける
 ・成功のイメージを具体的に見せる
 ・人としての生き方を教える
などが考えられます。

 先輩や上司にこのような役割を果たせる人がいると、それがみなさんの財産となります。その先輩や上司はきっと、「人間的魅力」があり、「知識・経験が豊富」な人であり、信頼関係を築ける存在であることでしょう。
 このようなメンターの存在は公私を問わず重要だと思いませんか?
 以下働く女性を支援する制度としてのメンター制度を通じて、メンターの重要性について考えてみたいと思います。

★働く女性を支援するメンター制度
 同じ職場に複数の女性社員がいない場合、複数人数いるもののキャリアや年齢層が同じ場合、女性管理職がいない場合、女性管理職はいるが一人の場合などにおいて、彼女達は日々の細々した疑問や悩みを誰に相談しているのでしょうか?
 新入社員の場合、こんな質問をしたら恥ずかしいと思って聞けないでいるかもしれません。仕事にも慣れてきたこれからという時期に、結婚と仕事の両立について悩んでいるかもしれません。女性管理職になったものの男性社員を部下に持ち、その接し方に悩んでいるかもしれません。専門職キャリアの今後と出産の時期に悩んでいるかもしれません。仕事と家事のバランスに悩んでいるかもしれません。
 こんな不安な時に、ちょっと気軽に相談したいときに、頼りになるのはやはり同姓の先輩であり、経験者ではないでしょうか。この先輩、経験者こそがメンターなのです。
 メンター制度を導入している会社では、女性社員一人ひとりに、職場内、もしくは職場を越えて専属のメンター(先輩社員)を設定しています。
 メンター役の先輩は、日々こまめに後輩社員に声をかけ、仕事上の疑問点や悩みがないかを確認し、自身の経験からアドバイスを行います。この関係を通じて、自分らしく公私共に頑張っていけるのではないでしょうか。そして、自分がメンター役になった際には、自分が不安だったことを思い出して、こまめに後輩社員へと声をかけていくのです。
 制度として導入されていない場合、社内にメンター役の先輩がいない場合には、積極的に社外にでも求めていくべき存在なのだと思います。大学の先生、もといた会社の上司、取引先、勉強会の先輩などきっと自分にとって必要なメンターが見つかるはずです。最近では、ブログがその役割をカバーしつつありますが、やはり自分の状況を把握し、会って話が出来る存在はとても重要なことではないでしょうか?

 私事ではありますが、仕事柄同業種の女性と出会うことも少なく、ましてや先輩となるとかなり困難な状況です。私にとってのメンター役は、産業界の女性達が集まる、有限責任中間法人日本ヒーブ協議会(※1)の会員である諸先輩方です。キャリア形成も結婚も出産も子育ても乗り切ってきた先輩方の活き活きとし
た姿がとても印象的で、心強く感じています。
 コンサルティングの現場では、自分自身が、厳しいことを言ってくれる人がいない孤独な経営者である社長や起業家にとってのメンター役であったり、支援先企業の組織開発、組織風土の変革の手段であったりと、メンター的役割の重要性を感じることが多くあります。
 また、別の視点で見てみると、自分にとって必要なメンター像を考えることは、いまの自分が求めているもの・課題を明確にすることであり、自分を理解することにつながっているようにも思う今日この頃です。
 みなさんもこの機会にメンターについて考えてみませんか?

※1 (中)日本ヒーブ協議会とは:http://www.heib.gr.jp/heib/q1.html
ヒーブとは、企業と生活者のパイプ役として企業内で働く女性。
日本ヒーブ協議会とは、変化する社会の中で有意義な仕事をしようと自ら参画し行動する女性たちの集まりです。


■執筆者プロフィール

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
京都リサーチパーク株式会社 EBSセンター 所長
 中小企業診断士、ITコーディネータ、日本経営品質賞セルフアセッサー、キャリア・デベロップメント・アドバイザー
Eメール  n-fumie@krp.co.jp