IT経営百選などでIT投資に成功した企業が紹介されることが増えてきまし たが、まだまだ情報システム導入がうまくいっていない企業も多いようです。 情報システムを導入する際、便利そうとか面白そうという理由でシステムを入 れた場合、数人までの事務作業の効率化まではうまくいきますが、それ以上の効 果は得られません。むしろ、このような観点で導入されたシステムがいくつかあ ると、例えばデータの再入力といったシステムのための余分な作業が増え、利用 者の満足が著しく低下します。 情報システムを入れたのは良いけど、よけいに忙しくなったという感じがして いるのであれば、間違いなく、上記のような初期導入時の誤りが原因です。 このような情報システムの導入の仕方を「部分最適」と呼んでいます。ある特 定の業務、あるいは人、所属の仕事のみを便利にすること、効率よくすることを 目的としていることから、このように呼ばれています。 一部分でも便利になるならそれでも良いではないかという意見もあるかもしれ ませんし、かつてはそのように考えられていました。しかし、このような「部分 最適」の考え方は、他の仕事や所属に思いの他負担をかけてしまっていることが わかってきました。最近は、部分最適が業務改革の足かせになっているとの認識 が一般的になっています。 そこで、最近良く使うようになったのが「全体最適」という言葉です。簡潔に いうならば、企業の戦略をまず考え、その戦略と合致しているかどうかを基準に、 いろいろな改善案を採用し実施しようということです。なかなか、全体最適とい うことは大企業でも実践できているところは少ないですが、情報システム導入に 限らず、経営をうまくするにはとての重要な考え方です。 パソコン1台買うことについても、それが自社の戦略についてどのような意味 があるのかを考えることが必須です。限られた資金を有効に活用するには、戦略 への貢献度が高いものを選択するというルールを決め、徹底することです。例外 は許してはいけません。こうするれば、会社の風土が大きく変わっていきます。 個人や組織が戦略志向になること、これが情報化投資を成功させる一番の秘訣 です。 ■執筆者プロフィール プロフィール 氏 名 宗平 順己(むねひら としみ) 所 属 (株)オージス総研 ソフトウェア工学センター長 資 格 ITコーディネータインストラクター、ITコーディネータ 専門分野 ・BSC(Balanced Scorecard) ・ビジネスモデリング ・IT投資マネジメント |
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