21世紀のアジアと日本/柏原 秀明

■はじめに
 新年あけましておめでとうございます。日頃よりITC京都をご支援,ご協力い
ただきまして大変ありがとうございます。ITC京都は,発足から6年目を迎える
ことになりました。まさに「継続は力なり」です。本年も昨年と同様にご支援い
ただきますようお願い申し上げます。 
 さて,昨年を振り返りますと,日本経済の景気拡大期間は,「いざなぎ景気」
を追い越す勢いで戦後最長記録を更新中と発表されています。しかし,一方では,
この国内の好況感を実感できないといわれているのも事実です。この原因の1つ
には,アジア諸国の経済力・技術力の向上や東南アジア諸国連合(ASEAN),南
アジア地域協力連合(SAARC)に代表される地域連携の進展によることが大きく
関係していると考えられます。このような現象を見据えて,大局的な視点で日本
の未来について述べます。

■将来予測「BRICsと夢見る2050年への道」
 米国大手証券企業のゴールドマン・サックスの報告書「BRICsと夢見る2050年
への道」(2003年10月)によりますと,21紀前半には,アジア諸国の経済力は,
欧米を抜き去る勢いであると予測しています。この報告書では,BRICs(ブラジ
ル,ロシア,インド,中国)の経済力は2025年には,G6(フランス,ドイツ,イ
タリア,日本,英国および米国)の約半分に達すると予測し,中国は,2015年ま
でに経済規模で日本を追い抜き,2039年には米国をも追い抜くと予測しています。
また,インドも2030年には,日本を追い抜くと予測しています。2050年の経済力
順位は,中国,米国,インド,日本,ブラジル,ロシアの順になるとの予測です。
したがって,20-30年後には世界経済は,欧米から中国・インドを中心としたア
ジア勢が牽引すると述べています。この報告書が予測する「BRICs台頭の萌芽」
は,もうすでに現実のものとなっています。
 
■モノ造り・加工貿易の国
 日本が,戦後約60年間急成長し,今日の発展を成し遂げたのは,様々な幸運に
恵まれたのは事実ですが,海外から石油などのエネルギー資源,鉄鉱石などの鉱
物資源を輸入し,付加価値の高い製品を間断なく生み出し続けた人たちの勤勉さ
と努力の結果といえます。言い替えれば,日本は,天然資源が乏しく,「人財」
のみでモノ造りを中心とした加工貿易で「勝負し,勝ち続けた」といっても過言
ではありません。
 しかし,日本は前述の報告書のように,10年後には中国に,20年後にはインド
に追い抜かれると予測されています。現実の日本の有り様(例えば,教育・教育
制度の崩壊,家族の崩壊,子供のいじめ自殺,公務員・議員の汚職,北海道某市
の破綻など)を見ると,もっと早く中国・インドに追い越されるのは必定と考え
ます。

■次世代人財の育成
 市場や競合企業が世界中に存在し,急激に変化しているグローバル環境におい
て,日本の強みである「サービスを付加したモノ造り」ビジネスを持続的に成長・
発展させるためには,グローバル環境に通用する次世代人財の育成が急務です。
次世代人財を育成する中核は,教育です。しかし,従来の教育人材の登用(同質
学歴・経歴,能力,性格など)は,「狭義の教育」に対応したものといえます。
21世紀の教育人材は,「広義の教育」に対応した多様な登用(異質な学歴・経歴,
時価能力,発想力,バランスのとれた性格,多様な実務経験,多様な年齢など)
が,強く望まれます。特に従来とは異なる評価項目・尺度の導入と共に評価側の
人材もそれに相応しい評価者人材に大きく変えていく必要があります。
 
■情報通信技術の応用
 21世紀に入って,情報通信技術は,1990年代には予想もしなかったほど急速に
進展してきています。
現在の若者は,携帯電話・インターネットゲームで育った世代です。この世代の
若者にとって「インターネット」は,当たり前の通信基盤でありもはやこの基盤
なくしてコミュニケーションはあり得ないと思っていると推測します。次世代人
財である現在の若者たちが,一層の付加価値人財に育ていただくためには,この
インターネットを手段として距離や時間を意識することなく,多用で異質な教育
人材と若者たちとのコラボレーションによる相互研鑽・活性化が望まれるところ
です。


■おわりに
 1980年代の高度経済成長時には,25年後,2007年の今日に,「第二新卒,ニー
ト(NEET),ワーキング・プア(Working Poor)」が,流行語になるとは,予想
すらしませんでした。
 21世紀のビジネスは,グローバル化・大競争時代のキーワードのもとに,国内・
海外を問わず極端な「弱肉強食」の状況になりかねません。しかし,このような
状況は,決して許すべきではありません。バランスのとれた次世代人財の育成を
地道に進めBRICsとひと味も二味も違う日本になるように期待します。
 
■参考文献
[1] Dominic Wilson, Roopa Purushothaman :Dreaming With BRICs:
The Path to 2050,Grobal Economics Paper No:99, 1st October 2003


■執筆者プロフィール

柏原 秀明
京都情報大学院大学 教授,シーシーエス株式会社 光技術研究所
    
ITC,技術士(総合技術監理・情報工学部門),APECエンジニア 
ISO27001審査員補,ISO9000審査員補,公認システム監査人補


 

 

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