ピラカンサや南天の赤い実に冬のアクセントを感じているうちに、年はあらたまって2007年に。京都の北野天満宮では、今年は新年早々に早咲きの紅梅が咲き、初天神の1月25日頃からは本格的に境内の梅が咲きはじめそうな様子とのことです。
昨年末には、このまま温室効果ガスの増加を放置すれば北極の氷が2040年にほぼ消滅するという説も発表されていましたが、環境問題の切迫さを伝えるニュ―スには事欠きません。日本の四季の良さと恵みが失われるようなことの無いようにしたいものです。
■さて、今回は、環境会計。 そのなかでもマテリアルフローコスト会計のご紹介です。
日本では、環境庁(現環境省)による「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン」の公表(1999年)や、環境会計ガイドブックの刊行(2000年から毎年)以降、環境会計による企業情報の公開が進んできました。
環境省では、環境会計とは、「企業等が、持続可能な発展を目指して、社会との良好な関係を保ちつつ、環境保全への取組を効率的かつ効果的に推進していくことを目的として、事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組み」だと、説明しています。
一般に会計が、株主等の外部の利害関係者へ情報を伝えるための外部会計と企業内の管理に資する内部会計に分けられるように、環境会計にも外部機能と内部機能の両面があります。環境会計の外部機能とは、環境報告書を通じて環境保全への姿勢や具体的な対応等と併せて環境会計情報を公表することで、その取組を利害関係者に伝達し、外部の利害関係者に対して説明責任を果たすと同時に、環境に配慮した事業活動に対する適切な評価に結びつく役割が期待されるもの、とされています。
近年では、上場企業の多くが環境会計報告書を発行するに至っています。そこでは主に外部機能の効果に着目されているようです。
では、環境会計は、どこまで内部管理に活用されているでしょうか。企業が健全な収益を得ていくためにどのように役立っているのでしょうか。日本の環境会計への取組みは、世界的にみても先進的といわれるなか、企業経営への役立ちの面で、まだまだ課題を抱えているという指摘があります。
内部機能つまりは、内部管理会計としてはたらく環境会計が求められています。
■マテリアルフローコスト会計(MFCA:Material Flow Cost Accounting
以下、MFCA)は、製造プロセスにおけるマテリアル(原材料+エネルギー)のフローとストックを物量単位と金額単位で測定するシステムで、廃棄物のコストを算出することにより、より有効な廃棄物削減策を考案できるツールとして、経済産業省が開発を主導している環境会計に関する手法のひとつです。内部管理会計に資する手法です。
ちなみに、経済産業省では現在進めている開発手法として、「環境配慮型設備投資意思決定手法」「環境予算マトリックス」「マテリアルフローコスト会計」「環境配慮型業績評価システム」「ライフサイクルコスティング」をあげています。
MFCAでは、内部管理会計のなかでも、原価計算、原価分析の手法といえるもので、そして、”負の製品コスト”を明らかにしていくことが大きな特徴となっています。
製造プロセスでは、ロスコストが常に問題となります。一般に普及している標準原価計算でも、実際原価と標準原価を比較し、その差異コストをロスコストとして把握します。ところが、標準原価には既に組み込まれているロスもあり、それらは見えなくなっています。MFCAでは、製造プロセスのなかで、ひとつの製造工程に投入されるマテリアル(原材料等)が、その工程を良品(正の製品)となって出ていくものと廃棄物(負の製品)となって出て行くものとに別れることを、データとして把握していきます。
例えば、100Kgの投入原材料から80Kgの製品がつくられるとします。このとき、20kgの原材料が破棄されているのであり、それを、”負のコスト”として把握します。
仮に1Kg=10円とすると、200円の負のコストです。伝統的な原価の考え方では100Kg全てで1000円が原価となり、販売により利益を得ようとするときの基準となります。いっぽう、MFCAでは、これを正の製品原価800円と、負の製品コスト200円に分けるのです。
このようにして把握された負のコストは、環境対応の立場からも、製造効率の面からも、圧縮が要求されます。こうしたところから、MFCAによって、環境対応と経済効率追求が両立されていきます。
経済産業省では、MFCA会計開発・普及事業を進めてきましたが、その成果は、同省のWEBサイトでも公開されています。大企業での事例とともに、中小企業の事例や、取組み手法なども紹介されています。 手法としても、まだ研究途上にあるMFCAですが、注目し、利用を広げて行きたい環境管理会計手法です。
経済産業省 産業技術環境局 環境調和産業推進室 環境会計WEBサイト
http://www.meti.go.jp/policy/eco_business/sonota/policy1-01.html
《参考文献》
・上記webサイト及び同リンクサイト
・ マテリアルフローコスト会計(MFCA)セミナーテキスト
日本能率協会コンサルティング 著
・ マテリアルフローコスト会計
國部克彦 中嶌道靖 著
■執筆者プロフィール
松井 宏次 (まつい ひろつぐ)
ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
mailto:hiro-matsui@nifty.com