プロジェクトマネジメント力をつける/山崎 正敏

情報システムの開発を立案して実行し成功するためには、プロジェクトをどのようにマネジメントするか、その良し悪しにかかっている。
プロジェクトマネジメント力は、2つの切り口で考えることができる。
ひとつめの切り口は「組織の力と個人の力」、ふたつめは「計画する力とコントロールする力」である。
以下、この2つの切り口についての考えを述べる。
(紙面の都合により、表現を簡略化しているので、ご容赦ください。)

1.組織の力と個人の力

◆「組織の力」とは、組織がプロジェクトをマネジメントするために必要な情報を適切に整理・分類し、即座に取り出すことができるようにすること(情報資産)、そして、マネジメント・プロセスを定義し、だれもがそのプロセスを理解し利用できるようにガイドラインとして整備すること(プロセス資産)である。さらに、これらの情報資産やプロセス資産は、常に改善がおこなわなければならない。このように記述していくと、いわゆる「成熟度モデル」の考え方に近づく。
 すなわち、プロジェクトマネジメントに関しての組織の成熟度を高めていくことが必要になるのである。

◆「個人の力」とは、組織の力を表現する「情報資産」や「プロセス資産」をよく理解し適切に利用できること、そしてプロジェクトの状況に応じて適切な意思決定ができることである。「情報資産」「プロセス資産」を理解し適切に利用するためには、実例を示した細かな研修を実施することが有効である。企業によっては、簡単な説明会だけで済ますことがあるが、うまく活用できていないことが多い。状況に応じた適切な意思決定ができるようになるには、生じている問題・課題が将来にどのような影響があるのかを常に考えることが基本動作として必要になる。「先憂後楽」である。その上で、経験を積むことだ。
 プロジェクトマネジャーとしての経験だけではなく、メンバーとしてプロジェクトに参画している段階から上述の基本動作をおこなって経験を積んでいくことだ。

2.計画する力とコントロールする力

◆「計画する力」とは、プロジェクトを最終目標に予定どおりに到達させるために道筋を描くことである。「プロジェクト計画書」として具現化される。
 この力は、個人としての力は必要であるが、「組織の力」に大きく依存する。
 初めて情報システム開発のプロジェクト計画書を策定しなければならない場合、一人で策定することは、ほとんど無理だと思う。経験者や過去の計画書を参考にすることが多い。したがって、「計画する力」をつけるためには、「組織の力」を高めることが前提条件である。その上で、どのような情報システムを開発するのかを理解し、プロジェクト計画書として具体化していかねばならない。
 具体化の過程でも、プロジェクトマネジャーがひとりで考えるのではなく、コアメンバーが集まって個の力を結集することが、精度の高い計画書を策定することに効果的である。

◆「コントロールする力」とは、計画書で具体化された道筋に沿ってプロジェクトが進行しているかどうかを監視し、マイナスの差異があった場合に元の道筋に引き戻すようにできる案を立て、案の実行の意思決定を正しくタイムリーに行うことである。この力は、個人の力によるものが大きい。プロジェクトは、決められた終わりの日に向かって刻々と動いており、同じ問題・課題が生じていても、発生した時期によって対策や意思決定内容は異なってくる。このようなことに対しては厳密なマニュアルは存在しない。状況の的確な把握と対策の立案、適切な意思決定ができるようになるには、実務を通じて個人を鍛えていくことになるのだが、ケーススタディを伴う研修などの訓練も有効である。


■執筆者プロフィール
山崎 正敏
オフィス Ajビジネス・プランニング/有限会社 ピーエム情報技術研究所
http://www.ajbp.jp/index.htm

特定非営利活動法人 日本プロジェクトマネジメント協会 理事・関西代表
ITコーディネータ、中小企業診断士、
PMP(Project Management Professional)