このコラムでも色々なメンバーが繰り返し記述していますので、IT導入にあたっては、その前提として業務の見直しが不可欠であるということは、読者の皆さんは理解されていることと思います。
すなわち、現状手作業で行っているものをシステムに移し変えてもたいした効果は得られないということです。むしろ、いろいろな例外を含めてシステムで対応しようとすると、とても複雑なシステムになってしまい、開発費用が高くなるばかりでなく、構築したシステムの操作も複雑になり、かえって業務効率を低下させることも多々あります。
このような苦い経験をした企業は多数あり、また今後も多く出てくるものと考えています。
こういう失敗があった場合、往々にして開発したソフト会社に責任があるように思われがちですが、真の責任は、開発を依頼した側にあります。ややこしいシステムを注文したので、使いにくいシステムができあがったということなのです。最近、このことを利用者側である企業が気がつき始め、冒頭に記しましたように、まず業務の見直しを行い、あるべき業務の姿を明確にした上で、それを効率よくかつ間違いなく処理できるようにするためのシステムを開発するというように変わってきたわけです。IT経営とは、このように業務改革とIT活用を一体となって行っている状態をいいます。決してパソコンやLAN、ERPを導入することではないので、間違わないようにして下さい。
さて、次に課題となるのは、ではこのあるべき業務の姿をどのようにして描くのかということです。コンサルタントにお願いして設計してもらうのでしょうか?それではうまく行きません。社員が素直に新しい方法に従うでしょうか?
マネジメントでよく使われる法則として、262の法則というものがあります。業務を変える場合もこの法則が適用され、積極的に参加、様子をみる、抵抗するの割合がやはり262になるといわれています。
業務を変えるということは大変なことです。社員が進んで新しい仕事の進め方に取り組んでくれなければ、仕事はうまくまわりません。
では、どのようにして皆が賛成する新しい仕事のしくみを考えることができるのでしょうか。このキーワードがタイトルにもある「社員参画」です。
3月末に米国でV字回復した企業のマネジメントの発表会があったのですが、共通していたキーワードが、社員参画、いわゆる小集団活動による経営改革への参画でした。日本では下火になっている小集団活動が米国企業で積極的に取り入れられており、そして成功を収めている。この光景を眼前にしたとき、かなりの衝撃を受けるとともに、なるほどとも感じました。
米国はトップダウンの経営スタイルと言われていますが、これは、目標設定においてです。トップから設定された目標を実現するために、どのような改善をすべきか、それを社員が集まり知恵を出し、競い合いながら進めていく、このようなマネジメントスタイルが現在成功の鍵を握っているのです。
日本国内に目を向けると、ITCが参画した成功プロジェクトは、実はこの参画型スタイルをとっています。ITCは答えを出すのではなく、社員さんが答えを見つけ出す手助けをする。主役は社員です。
今後、読者の皆さんがIT導入を検討されるときには、是非この参画型の体制をとられることをお勧めする次第です。
■執筆者プロフィール
氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 (株)オージス総研 ソフトウェア工学センター長
資 格 ITコーディネータインストラクター、ITコーディネータ、公認シス
テム監査人
専門分野
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・IT統制