皆さんは、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用されたことがあるでしょうか。
国税電子申告・納税システム(e-Tax)とは、所得税や法人税など国税の申告や申請・納税をする際、パソコンを利用しインターネット経由で行う仕組みのことです。平成16年2月から運用が開始されましたが、事前準備に手間がかかることや、インターネットを経由することの不安感などから利用件数は、当初の予定より大幅に少ないと言われてきました。
本年1月より国税電子申告・納税システム(e-Tax)が少し使いやすくなりました。
税理士が代理で申告・申請をする際、従来必要とされた納税者本人の電子署名が省略できるようになったのです。これを受けて、法人の電子申告も徐々に件数が増加するものと見込まれます。
この国税電子申告システムには、XBRLという国際標準である財務データ交換技術が使われています。
XBRLは英語ではeXtensible Business Reporting Languageといい、金融機関および一般企業を含む財務情報および取引情報の標準化言語です。
坂上学大阪市立大学准教授によれば、「XBRLは、企業の財務諸表を記述するためのXMLベースのマークアップ言語であり、世界各国における電子開示、与信管理、税務申告などのシステムに採用されるべく国際的な協力体制のもとで開発が進められている。このXBRLが日本における電子申告の財務諸表データの標準仕様として利用されることにより、財務諸表データの一元的な管理への道が開けたことになる。その意味において、XBRLの採用は単なるデータ仕様の選定の問題にとどまらない。各企業における財務報告や納税業務などの業務の効率化をもたらし、日本における証券市場の活性化が期待され、ひいては経済の再生にもつながる可能性を秘めており、その波及効果はかなり大きい」と紹介されています。
例えば、電子申告データ(法人税申告書に添付の決算書データ)を活用し次のようなサービスが始まっています。
某メガバンクの融資(審査)時における「電子申告データ受付」です。
予てより、金融機関に融資の申込みがあった場合、その金融機関は融資先企業の財務内容を分析するため税務署の受付収受印が押された紙の税務申告書類のコピーをその企業に提出してもらうというのが一般的な手続きです。
こうして企業から入手した財務諸表のデータを審査や格付のシステムに取り込む作業は手作業が中心となっており、相応の時間と労力がかかっています。
これをXBRL形式にすることにより、瞬時に変換することが可能となり、融資の手続きが簡素化されることにつながるのです。
一方、電子申告を行った企業は、申告データをわざわざ印刷して金融機関に提出せざるを得ませんでしたが、一部金融機関では「税務署の受付収受印がない」ということで難色を示すケースもありました。つまり、電子申告により銀行取引の利便性が損なわれていたわけです。
このような状況を背景として平成18年10月より、電子申告を行った企業を対象に、決算情報を含む電子申告データ及び電子納税証明の受付が始まりました。
電子申告の実績が法人税申告全体の数パーセント程度の現状においては、電子データ受付による業務効率化の効果は限定的ですが、今後こうした金融機関の動向が電子申告のイメージアップにつながっていくものと考えます。
また、今回は詳しく触れませんが、XBRLの究極的な目的は、財務情報のサプライチェーンの構築及び実現です。監査法人や会計事務所もこのサプラーチェーンの中に当然に組み込まれています。
http://www.xbrl-jp.org/whatisxbrl/benefits.html
私たちは、昨今の最新技術のおかげで、コンピュータ言語などの情報技術をまったく知らなかったとしても財務データの作成、電子申告は行うことは可能でしょう。しかし、こうした時代の流れの中に存在し、主に中小企業をサポートする立場にある税理士としては、単に受身で済ませるのではなく積極的に理解を深めておくことが必要であることを痛切に感じる今日この頃です。
■執筆者プロフィール
小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。