オフショア開発の波に乗る前に一服しませんか?/戴 春莉

 「オフショア開発」にはメリットがありますが、リスクも存在しています。事前にリスクについての調査と分析、そしてマネジメントをする必要があります。
先ず、オフショア開発先を知ることが大切です。私は中国人として、中国の文化と習慣を当たり前のものとして知っています。そして、日本で働きいろんな交流の場に参加することで、日本人がどういう風に中国人を見ているのか、そしてオフショア開発のどのようなところで困っているのかが分かったように思います。
そのような私から見て、最もうまく中国のことを表している、東京国際法務事務所の日本人代表である加藤真理子さんの文章を紹介します。

○中国は、「個人」を重視
 中国人は、会社に対する忠誠心よりも自己の能力を生かせることを重視します。
同じ業務ならより給料の高いところで働きたい、常にステップアップのチャンスを狙っています。
 中国人にとって家族は、人脈の最小単位と言われるほど強く結びついたものであり、中国人にとって家庭の団欒はなによりも大切なものなのです。夫婦共働きが当たり前の中国では、男性の家事参加や子どもの送り迎えも日常のことです。
できるほうがする、ということが夫婦の間で自然に決まっています。会社ではなく自分自身や家族の利益のことを考え行動する、ビジネスにおいても家族が最優先、それが中国人なのです。

○人脈と人の和
 個人の利益の追求と徹底した自己主張をする反面、対価を求めず相手を助ける心、和を大切にする心のあるのが中国人であるといえます。一度信頼関係を結ぶと、家族のように尽くしてくれるのが中国人なのです。
 ビジネス上でなにか突発的な問題が起こったとき、それを解決する原動力となるのは、結局はそれまでに築いてきた大小の人脈だといえるでしょう。「大」が家族のようなつきあいのある中国人だとすれば、「小」は知り合ったばかりの中国人かもしれません。また、見ず知らずであっても手を差し伸べてくれることもたくさんあります。
 とはいってもみんながみんな親切なわけではありません。知らん顔している人もあります。けれども、差し伸べられる手は、日本でそういう行為を受けるのとはまた違った、あの大地を背景にしているかのような、もっと力強く自然で、もっと素朴で温かいものに感じられるのです。

○通情達理
 中国人は非常に面子を大事にする民族であると同時に、「通情達理(情理にかなう)」、つまり人情と道理の両方にかなうことが正しいことだとする価値基準があります。孔子の説いた「中庸の徳」です。
 中国人と外国人がその文化の違い・価値観の違いから折り合いがつかないとき、中国人はこの「通情達理」に従い、両者の面子の保たれる方法、両者がともに納得のいく方法を探し出そうとします。私たち日本人が「通情達理」の精神を大切にしようという気持ちになれば、文化の違いから起こるあらゆる摩擦にも少しずつ対処していくことができるのではないでしょうか。

○日中ビジネス友好
 行かずして郷愁を感じ、行ってみれば故郷になってしまう。多くの日本人が中国に懐かしさを感じる一方で、中国人と日本人はどうしてこんなにも違うのか、永遠に相容れることはないのではないかと思うこともしばしばでしょう。両者が似ているだけに、違うということ・理解できないということに苛立ちや腹立たしさを感じることさえあるでしょう。
 けれども、ある中国人が言いました。「昔、日本と中国は陸続きでつながっていたと思うよ。だから、きっといちばん分かり合えると思う。過去の歴史をよく勉強すれば、歴史を引き起こしたのは政治で、ひとりひとりの日本人ではないということがよくわかる。」政治の話は避け、日中戦争のことには気を遣うべきとはいっても、こんなふうに一歩踏み込んだ本音の会話ができるといいですね。そんな信頼関係を結ぶことができたとき、彼(彼女)を通して本当の中国が見えてくるのではないでしょうか。
 多少言葉が通じなくても、心は確実に通じます。人間同士の真の交流は、言葉も文化も超えたところにあると思います。文化や民族の違いが障害となってどうしても理解し合えない部分というのは実はわずかで、個人レベルではその違いを確実に超えて信頼し合うことができるのです。そのような、たくさんの個人と個人とのつながりが、やがては国のつながりへと発展していくのでしょう。
 日中間の真の友好関係は、ビジネスという共通の目的を持った非常に人間臭く前向きな戦いを通してこそ生まれ、21世紀の国際経済と国際関係の理想的なあり方もまた、両国がどれだけ相互理解・相互発展を実現できるかにかかっているのではないでしょうか。

 私は偶然、加藤真理子氏のホームページを拝見し、全文を読んで大変感心しました。今まで、色々なところで、中国人は「個人主義」の民族と言われています。
確かに、仕事の話になるといつも夢中になって、周囲に配慮する余裕をなくすこともありました。しかし、仕事が終わった後の中国人は、友人や家族を非常に大切にします。友人と家族のために自分の利益を犠牲にすることも惜しみません。
加藤真理子氏は中国人の心の中を掴んでいます。中国人は「家族主義」です。
「家族」の意味はとても広く、血縁関係の人々はもちろん、職場の同僚、友人達も「家族」です。
 皆さんが中国でオフショア開発を進める時には、中国人技術者と家族の話をしてみませんか。きっと親しくなれます。

(引用元)加藤真理子(国際法務事務所)さんの文章
 http://www.mao-cjlaw.com/ar_chbzmn_01.html


■執筆者プロフィール

氏   名   :戴 春莉(たい しゅんり)/情報システム監査士
得意分野   :デザインの手法を情報処理技術への応用、上流工程の要求分析、
        問題デザインと可視化など
メールアドレス:dai-jp@leto.eonet.co.jp