CSRへの取り組み/岩本 元

■CSRの背景
 CSRとはCorporate Society Responsibili-
tyの頭文字を取ったもので「企業の社会的責任」を意味します。かつて、社会
(主に消費者)が企業に求めていたのは、安価な製品・サービスの提供、雇用の
創出でした。今はこれらに加え、安全・安心の提供、適正な労働環境、情報の安
全管理/開示、環境問題への対応、災害対策など多くのことが、企業の果たすべ
き責任として社会(株主、住民など関係者全て)から求められています。

■CSRに向けた活動内容
 CSRを果たすための具体的な活動内容を正式に定めているものはありません
が、よく行われている活動について説明します。

○安全・安心の提供
 パロマの瞬間湯沸かし器死亡事故への対応遅れ、一連のマンション耐震強度偽、
三菱自動車のリコール隠しなど、消費者に危険を与える不祥事を防ぐのはもちろ
んですが、例え危険が少ないとしても、雪印食品の牛肉産地偽装やミートホープ
の牛肉偽装のような、消費者に不安・不信を与える振舞いを避けることが求めら
れています。

○適正な労働環境
 先進国の企業が、安価な労働力を求めて発展途上国に工場を保有することがあ
ります。以前、ある有名なスポーツ用品メーカーの海外工場で児童に違法労働を
課していることが問題となりました。企業には、男女差別のない、安全で健康的
な労働環境を従業員に提供することが求められています。

○情報の安全管理/開示
 自衛隊や警察からの情報漏えいが社会問題となりましたが、企業からの情報漏
えいも頻繁に公表されています。個人情報保護法では個人情報の安全管理を求め
ていますが、その他の機密情報の安全管理も企業価値や信頼の損失を防止するた
めに求められています。
 逆に、適切な情報開示も重要です。財務情報、内部統制報告書だけでなく、プ
ラント事故などの緊急時においては、地域住民に誤解や不安感を与えないよう、
迅速に情報を開示することが求められています。

○環境問題への対応
 大きな社会問題となっている環境問題の解決に企業が真摯に取り組むことが求
められています。取り組みの例としては、適切な原材料の選定、製造プロセスに
おける使用エネルギーの削減、3R(リデュース、リユース、リサイクル)に配
慮した製品の提供、グリーン購入(エコマークのように、環境負荷が少ないこと
が保証された商品やサービスを優先的に調達する)、排出物の削減などがありま
す。

○災害対策
 大規模地震などの災害に備えることが求められています。デパートや遊戯施設
においては顧客を危険から守る対策が必要ですし、製造業・サービス業において
は取引先に損害を及ぼさないために活動をできるだけ早く再開する、工場を分散
するといった対策が必要です。後者はBCP(Business Contin-
uity Plan:事業継続計画)とも呼ばれます。先日の中越沖地震では、
自動車部品メーカー リケンの工場が生産を停止して、トヨタや日産自動車とい
った大手メーカーの生産がストップしました。リケンの災害対策も必要ですが、
トヨタや日産自動車にも部品調達先を複数持つといった災害対策が必要です。こ
れにはカンバン方式等のサプライチェーンマネジメントと共存させることが難し
いという課題もあります。

 他にもCSRの活動としては、地域のボランティア活動の支援、人権運動への
参加などがあげられます。多くの国内企業が、毎年、これらの活動結果をCSR
報告書として公表しています。

■CSRと内部統制、コンプライアンス
 最近、内部統制やコンプライアンスという言葉をよく耳にします。これらとC
SRの違いは何でしょうか。コンプライアンス(法令順守)は、法律や一般的な
倫理を守ることが企業に求められます。会社法や金融商品取引法(J-SOX)
が定める内部統制では、コンプライアンスに加えて、財務諸表が正しく作成され
ていること、業務が効果的/効率的に行われていることが求められます。内部統
制が企業の直接の利害関係者(ステークホルダー)である株主から求められるも
のに対して、CSRは社会から求められるものです。CSRは、内部統制に環境
問題対応などを加えた、より広い概念と言えます。

 CSR > 内部統制 >コンプライアンス

 CSRを果たさないとどうなるのでしょう。コンプライアンスを果たさないと
法令違反の罰則を受けることになります。内部統制を果たさないと、会社法の対
象である大会社や金融商品取引法の対象である上場会社はそれらの法律に定めら
れた罰則を受けることになります。しかし、CSRを求める法律は今のところあ
りませんので、CSRを果たさなくても罰則を受けることはありません。ただし、
CSRを果たしている同業他社と比較されることによって、相対的に評価が落ち
て株価の低下を招く可能性はあります。
 CSRについてはそういったマイナス面に着目するのでなく、CSRを果たす
ことによって会社の社会的評価や信頼性を向上させ、企業価値を高める、社員に
自身とプライドを与えるといったプラス面を重視して取り組むと良いでしょう。

■CSR調達
 CSR調達とは、CSRを目標とした経営(CSR経営)を実施している企業
が、取引先にもCSRを求めることを指します。先に述べた例では、グリーン調
達や、トヨタがリケンに対して災害対策を求めること等があげられます。欧米企
業の多くが、自社を守るためにCSR調達を実施しています。国内でも、富士ゼ
ロックス、SONYなどCSR調達を導入する会社が増えています。そういった
会社と取り引きするためには自社がCSRを果たす必要があります。



■執筆者プロフィール

 岩本 元(いわもと はじめ)

 ITコーディネーター、技術士(情報工学部門)
   &情報処理技術者(システム監査、プロジェクトマネージャ他)
 企業における情報セキュリティ対策・BPR・IT教育・ネットワーク構築の
 ご支援

 お問合せ先:iwamoto.hajime@zeus.eonet.ne.jp


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