京都の町のCIO[株式会社丸嘉様の話]/田上 淳一

 先日、ある勉強会で、株式会社丸嘉(まるよし)の代表取締役社長小畑隆正
(おばたたかまさ)様のお話しを聞く機会がありました。小畑社長は、京都の木
材商の五代目(安政6年創業)ということですが、株式会社丸嘉は、昭和51年
設立、資本金1000万円、従業員10名の会社です。従来は、地元の業者へ、
木材、建材を卸売りする地元密着の会社でしたが、小畑社長が、7年前にインタ
ーネット活用を手がけられ、今や、フローリングサイト「京都・木想商家」単体
で月1500万円程度の売上をあげる、全国ベースの「インターネットビジネス
企業」への変身を果たされております。それも、楽天や、ヤフー等の大手WEB
専門会社の援助を受けることなく、自力でビジネスを築いてこられています。何
が成功を導いたのか、ヒントを沢山頂きましたので、ご紹介致します。
 
 そもそも、小畑社長は、インターネットビジネスへは、ごく自然に関わって行
かれたようです。きっかけは、趣味の自動車の購入です。
自分の好きな車をインターネットオークションで安く買ってみた。半信半疑だっ
たが、現物の車が約束通りに、品質も保障されて納期通りに届いた。充分、乗り
回して楽しんだ後で、今度は、オークションで売りに出した。買った時より高く
売れて、しかも、売った人に大変感謝された。このことが、小畑社長の「インタ
ーネットビジネス」の原体験となったそうです。
この経験で、“いける、やって見よう”と思われ、“木材・建材”のインターネ
ットビジネスを始める決断をされたと言うことです。

 小畑社長は早速、サイトを立上げ、建材(ベニヤ板とフローリング)の店をイ
ンターネット上に出してみられました。しかし、ほとんど売れない。まず、サイ
トへのアクセスがない。グーグルやヤフーから検索して見ても、まず、ヒットし
ない。HPが見つからない。と言う厳しい現実にぶつかられたそうです。普通、
ここで足踏みして、終わってしまうサイトが多いと聞きますが、小畑社長はここ
で奮起されました。

サイトの順位を上げるためはどうするか。インターネット検索の専門研究の先生
のところに行かれ、へばりつきで、「順位を上げる極意」の伝授を受けられたそ
うです。手取り足取りで、教えを請い、キーワードの設定と幾つかの技術上の工
夫で、なんとかサイトを上位に持って来られるようになったそうです。しかし、
検索でサイトが上位に来ても、アクセスされて、注文、契約まで繋がらなければ
ビジネスにはなりません。

次は、アクセス数を増やし、注文に繋げる工夫でした。サイトを覗いてくれる人
は、何を見て覗いてくれるか、また、欲しいものを求めて来る人にとって、何が
 キーワードかと言うことの研究だったようです。木材・建材は一般の消費財
とは違い、そんなに軽い気持ちで買われるものでもない、ある程度、絞って検索
されてくる、そういうわけで、キーワードの間口を狭くし、お客さまの深い興味
に対応する内容にしてみました。そうすると、その内に、“無垢フローリング”
にポツリポツリと受注が来だしたそうです。お客さまとの会話で、さらに、売れ
筋商品が見えてくる、見せ方の工夫ができるようになり、日々の積み重ねで、
今日の賑やかさに至ったとのことです。一時は、引き合いが盛況で、電話問い合
わせが殺到し回線がパンクしたため、サイトから電話番号を外し、メール問い合
わせに限定することで、やっと、落ち着きを取り戻せたというエピソードもあり
ます。
サイトについての工夫は、次のように述べてあります。

サイト作成の経験から言えることは、“総合”や“まぜこぜ”サイトが一番ダメ。
今お客さまは、“なんでもあります”、“どれもこれもあります”のサイトには
来ない。求めるものを絞り込んで、また、そのなかでの好みを選択する指向と
なっている。だから、明快なキーワードとサブキーワードが、とても大事である。
 例えば“無垢フローリング”での“床暖房“濃い目”“安い”のサブキーワー
ドの設定などで絞り込まれていく。そう言う意味では、目的別にサイトを分けて
きめ細かく絞り込めて行けた方がいい、サイト間はリンクを張るのが大切。
 また、サイトの鮮度は、日々更新で保つこと。興味ある人や受注した人は、
必ずリピートアクセスがある。そのとき、前と同じ古い情報だと失望して来なく
なる、ということです。
 小畑社長は、“企業は情報を発信し続けなければ潰れる”と言う強い信念を
お持ちです。現在サイト戦略が功を奏して、古材本舗:1位、古材市場:9位
の順位にあるとのことです。

 ところで、今回のインターネットビジネスが成功したポイントとして、小畑社
長は2つ上げられました。
まず、全国に発信する上で、“京都ブランド力”が大きい。京都と言うことで、
ホンモノ指向、品質保証、“京都で売るものは間違いない”と言うお客さまの
信頼を痛切に感じるそうです。
次に、成功のポイントとしては、小畑社長のブレーンとなっている「WEBサポ
ートチーム」の存在です。小畑社長を支える7人の非常勤メンバーの力です。
大企業のWEBチームに負けない力量と絶大な信頼をおいておられます。
 サイト構築、サイト更新、プログラム、グラフィックデザイン、各検索エンジ
ン、ハードウエア機器担当、コンピュータ及び、インターネットに深く精通した
専門家ばかりです。その7人の専門家は、小畑社長の“助けて!”のお願いから、
芋づる式に集まった仲間だそうです。小畑社長の仕事はスポットということで、
”必要な時に必要な人に来て貰い、必要なことをして貰い、働いた分だけ
支払う”原則で、一般に頼む十分の一以下の費用で済んでいます。
 この「WEBサポートチーム」とは、定期にWEB戦略会議を持ち、長期の
方向決めも行っているとのことです。小畑社長が「WEBサポートチーム」の
総合管理を行うだけで、丸嘉スタッフは、お客さま対応や、商品開発に専念し、
 小規模の企業であっても、全国規模の大きなビジネスを可能としているとい
えます。自社に足りない部分は外注するという発想を持つ事により、人件費を
最小限に留めることが可能となったといわれます。

 実は、小畑社長がさらりと言われた「WEBサポートチーム」の総合管理が、
誰でも簡単には出来ないものですが、小畑社長は、“餅屋は餅屋に任せる”と
守備範囲をはっきりした上で、しっかり“人に頼られる”ことで、強い信頼関
係を築いておられるようです。
 ただ、頼むには、頼む内容がしっかりしてないと、ことは進まないものです。
そう言う意味では、小畑社長のビジネスに対する明快な考えがあってのことと
いえます。

 小畑社長は、「京町家古材リサイクルの需要創造によるビジネスモデル構築と
付加価値アップ」と言うテーマで、財団法人京都市中小企業支援センターから第
13回「オスカー認定」を受けられています。(注1)
 今、小畑社長は、失われゆく京町屋、その“ほっこりして心休まる空間”の保
持と貴重な建築素材としての“古材のリユース”をテーマにビジネスに取組まれ
ています。長年、木を扱ってこられた目利きのプロとして、全国の古材を集め
(4万本)と町屋空間創りの需要を結びつけるビジネスを始められています。ま
た、古い家がリニュアルされるなかで、ユーザ、解体業者、産廃業者、建設会社
、フィナンシャルプランナーとネットワークを組み、全てが満足いくようにお手
伝いするコーデイネータの役割も進めておられます。情報を早く握れば、ビジネ
スの頭が取れるという考えで、お客さまとの接点を直接持てる「インターネット」
の特徴を遺憾なく発揮されて、ビジネス展開されています。サイトが盛況になった
お陰で、仕入れについても、全国から、時にはカナダ、中国、ベトナムから、い
い素材の提案が来るようになっているそうです。
 従来の地場の建築屋さんや大工さんの注文を受けて“早く、安く、愛想良く”
商売をしていたスタイルから、インターネットのサイトから得られるお客さまの
生の声と対話しながら、ニーズを知り、品揃えを考え、提案していく、“頭取り”
の攻撃型のビジネススタイルに変身しているとのことです。

 バブル崩壊以来、インターネットの普及と前後して、企業経営に経営とITの
統合が強く叫ばれてきました。今回、丸嘉の小畑社長の話をお聞きすることで、
まさに、文字通り「経営とITの統合」を自ら実践し成功されている様子が判り感
動した次第です。皆様の何らかのヒントになれば幸いです。小畑社長は、現在、
CEO,CIO,COOを兼務中です。

(注1)
株式会社丸嘉は、財団法人京都市中小企業支援センター主催の企業価値創出
(VC:バリュークリエーション)支援制度に応募され、第13回「オスカー認
定」を受けられた“企業価値創造型”の元気な企業です。VCプランは、テーマ
が「京町家古材リサイクルの需要創造によるビジネスモデル構築と付加価値アッ
プ」です。内容・特徴は、
「近年、環境問題が大きく話題になっている中、住宅の廃材(古材)が捨てられ
続けていることに気付き、“リユース”について深く研究する様になる。70年
以上前に建てられた京町家の古材(木材)には、現在日本では取得できない様な

希少な素材が数多く含まれている。木材(古材)というアナログの素材を、これ
まで培ってきたインターネットと言うデジタルを使って販売する仕組みに着手し
た。元来「木の目利きのプロ」である、私たち木材商が廃材の中から、まだ使え
る価値のある古材を見極めて、市場にあった適性価格にてインターネットを通じ
て全国へ販売する仕組みの確立をした。」と言うものです。
(京都市中小企業支援センター発行の情報誌「からすま」VOL.199より)
なお、丸嘉様が13回オスカー賞を受賞された背景には、当ITC京都理事
(&成岡マネジメントオフィス社長)成岡秀夫氏が、審査員として参加していた
ことが、ご縁のきっかけになったとのことです。
(注2)
 CEO:最高経営責任者 CIO:最高情報責任者 COO:最高執行責任者

(ご参考)
  丸嘉様会社概要 http://www.maruyoshi21.com/kaishagaiyou.html
  ウエブサイト
   ・京都・木材ネット   http://www.mokuzai-net.jp/
   ・京都・木想商家    http://www.maruyoshi21.com/
   ・京都・古材市場    http://www.kozai-ichiba.com/
   ・古材本舗       http://www.kozai.cc/ 
   ・床暖房ワールド    http://www.yuka-danbou.com/


■執筆者プロフィール

田上 淳一(タノウエジュンイチ)
資 格:ITC、PMP
得意技:プロジェクトマネジメント支援&プロジェクト監査

e-mail:tanouejkrs@yahoo.co.jp


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