最近、新しくできた商業施設や駅・公共設備で、大型ディスプレイに映る広告を見たことがあるだろうか。
大型ディスプレイに、テレビのニュースではなく、画像や動画、音楽などを組み合わせた広告を表示していることがある。これが、デジタルサイネージ(電子看板)と言われるものだ。
デジタルサイネージは、ディスプレイとパソコン、ネットワークとコンテンツから構成される。ひとつの画面で、複数の情報を一度に表示したり、 時間帯を変えて複数の情報を表示することができる。
さらに、このコンテンツを映す機器に大型ディスプレイを使って、顧客の興味を惹きつけたり、多くの情報を提供する工夫をしている。
例えば、高速道路の主要なサービスエリアで渋滞情報を流したり、新しくできた商業施設である東京ミッドタウンでは、館内施設情報とテナントショップの案内を流している。京都では、京都リサーチパークの施設案内とその日の研修や会議スケジュールが表示され、お客様の利便性を高めている。
これらのデジタルサイネージは、大型ディスプレイを使った情報提供の仕組みとして、主にマーケティング分野に利用が拡大されつつある。
デジタルサイネージの特徴は、エリア限定してピンポイントで広告を流すことができることである。たとえば、昼の情報提供番組で流れていた商品が店頭にある場合、POP広告では一斉に内容を変えることは難しいが、デジタルサイネージでは、簡単にできる。
このデジタルサイネージがなぜ広まってきたかというと、液晶やプラズマデスプレイの大型化と、価格下落である。高精細な画像が表示できるディスプレイを使い、コンテンツの表現が豊かになったことで、デジタルサイネージの導入がしやすくなったのである。
この結果、市場性が高いと認識され、2011年には米国での広告市場規模が、4000億円になると予想されている。(フロスト&サリバン調べ)
さて、中小企業では、このデジタルサイネージをどのように利用できるだろうか。中小企業はデジタルサイネージを、ユーザーの立場とビジネスチャンスを取り込む立場としてとらえることができる。
ユーザーとしては、広告効果が大きいと思われる。画面が大きく、店頭での興味を引きやすいため、つい見てしまい、内容が目に飛び込んでくるように記憶が刷り込まれるのだ。
私が通う歯科では、待合室で入れ歯の新しい治療であるインプラントの紹介を行っていた。歯科に行く前までは、インプラントという言葉すら知らなかったが、出るころには、そろそろはの噛み合わせが悪くなってきた母に勧めてみるのも良いなと思ったほどだ。
ただ、デジタルサイネージを導入する場合は、初期導入コストが大きいことと、コンテンツの入れ替えであるランニングコストがかかるので注意が必要だ。
一方、このデジタルサイネージの潮流をビジネスチャンスとしてとらえるなら、中小企業は、以下のモノやサービスを提供することができる。
1.ディスプレイやパソコンなどのハードウェア提供
2.ディスプレイの取り付けや電源工事などの設備・設置
3.コンテンツ表示・制御のためのソフト開発
4.デジタルサイネージで表示するコンテンツ作成
5.コンテンツ配信サービスの提供
このうち、中小企業が取り組める、コンテンツ作成に焦点当ててみる。
コンテンツは、駅やホームなどの情報提供、商業施設や公共施設などの施設案内、小売業の広告コンテンツなどがあるが、中小企業は、広告コンテンを作成することが、中心となるだろう。
この広告コンテンツを作るに当たっては、企業がプロモーションに利用する、目を引くような広告と、動きのあるコンテンツをパソコン上で作ることが求められる。
具体的には、Flashと呼ばれるツールを使ってストーリ性のある商品説明や企業の歴史等をテーマに沿った構成と色使いで作成していくことが重要だ。
これらのコンテンツを中小企業が売り込む場合は、売り込み先企業に対して、企業のチラシ、カタログ、パンフレットを作る印刷業者に代わって作成できることを表明して行けばよいだろう。
デジタルサイネージへの取り組みは、大企業から始まっているが、中小企業もコンテンツなどの提供者側から取り組み始めて、利用者側に参入すれば良い。
■執筆者プロフィール
山口 透(とおる) toruy55@nifty.com
流通業や製造業等でIT戦略策定支援やバランススコアカードの導入、
DWHの構築支援などを行っている。ITコーディネータ、システムアナリスト