格差社会と中小企業の活性化/玉垣 勲

 先日の日米欧の7カ国(G7)による財務省・中央銀行総裁会議で「米住宅問題や原油高が世界の経済成長を減速させるとの懸念を明記した共同声明」を採択した。経済のグローバル化は、意図するせざるに拘わらず将来の企業経営に相応の影響を与えるものであり、日本経済の将来を予測する上でもこの「声明」は、注目に値する。資本主義経済において景気循環は避け得ぬ現象であるが、この潮流の成行き(流れの変化)を注視したい。

1.現代中国経済の発展とその陰
 海外に目を向けたとき、最近の中国経済の急成長振りが際立っているが、本年9月にわが団体の有志は、オフショア開発についての相互交流をメインテーマに4泊5日の中国南京への情報経済産業視察を行なったが、南京の目覚しい発展を目の当たりにして中国都市部の急速な成長振りに驚嘆した。
 ただ先頃開催された中国共産党大会では、これまでの高成長路線に自信をにじませながらもこの急速な成長が、他方で地方経済停滞の地域格差を助長、拡大した現実を直視し、これまでの高度成長傾斜路線の一定の修正を意図した「持続可能な安定的な発展」を目指す方向を示した。

2.格差是正と中小企業支援政策
 翻ってわが日本にあっても、規制緩和・市場主義を建前とした構造改革の実践がバブル以降の経済の低迷の脱却に大きく寄与したところではあるが、改革の”影”の部分として、中央と地方の経済力格差拡大を招来したこともこれまた事実である。
 企業レベルにおいても、大企業を主体とした重厚長大型企業の復活がなった一方で、企業数で絶対的多数を占める中小企業ではバラツキはあるものの成長経済の恩恵を必ずしも享受できていない。多数の中小企業の存在が、地域経済活性化・発展の要であるとの基本認識に立つ時、格差是正に向けての日本経済の均衡ある発展のためにも、地方経済を担う中小企業重視の経済・金融政策とその運営に格段の配慮を切望したい。

3.中小企業活性化の経営戦略
 先の中国南京の視察で、我々はIT関連企業、日中合弁企業への訪問はもとより中国江蘇省情報産業庁の要人、南京大学関係の研究者・学生、さらに江蘇省内のIT関連中小企業者の方々と相互のプレゼンテーション、活発な忌憚のない意見交換及び友好的交流を行なったが、江蘇省における行政と中小企業が一体となっての成長発展への取組及び企業経営者の事業に賭ける意気込み、熱い思いに圧倒もさせられた。
 日本の企業経営においても、弛みない経営革新そのためのITツールの戦略的利活用が言われて久しいが、中国企業の飛躍的成長、発展の鍵は、行政政府の中小企業への手厚い支援を背景に個々の活力ある中小企業のITツールを駆使してのたくましい経営革新の一端を垣間見ることができた。

4.ITツールの経営戦略的利活用と地域ネットワーク
 日本においても、中央と地方の経済力格差是正のためには、まずもって地域の中小企業群が元気であること、元気であり続けることにあることは論待たないところである。
 この点では、今回の中国視察から我々は地域経済復権のために一定のヒント、すなわち中小企業経営の経営改革・革新をいっそう効果あらしめるためにも地域経済社会レベルにおける関係行政機関、諸団、地域金融機関が一体となっての地域ぐるみのネットワーク作りとその連携強化を前提とした中小企業経営におけるITの戦略的利活用への強力な支援(サポート)が喫緊の課題であることを学び得た。


■執筆者プロフィール

玉垣 勲(たまがきいさお)
ITコーディネータ、中小企業診断士、社会保険労務士
ファイナンシャル・プランナー(FP)、通訳ガイド
(NPO)ITコーディネータ京都会長
(総務省)電子政府推進員

【一言】
サラリーマン35年(信用金庫)後、自営へ転進、人生後半・人生本番。
会社員時代の職務経験・人脈、過去に取得の資格を生かして、地域社会、地元企業、ご家庭のIT化に尽力します。