SaaSは中小企業のもの?/宗平 順己

 SaaS(Software as a Service)のことがこのコラムでも何度か記述していますので、皆さんも少しは意識して頂いているのではないかと思います。
 SaaSの特徴は、許される範囲ではありますが、自分たちの仕事にあうように画面のつくりやデータ項目を自分で設定でき、月々の使用料を払うだけで使うことができるということです。しかもこの許される範囲がかなり広く、この自由度の高いレディメード感覚が特徴と言われています。
 しかし、SaaSのメリットは実はもっと別のところにもあります。SaaSを利用する時、皆さんに必要なのはインターネットブラウザが動くPCとインターネット接続環境だけ。今家庭で使っているパソコンで十分です。そして何よりも大事なこと、それは大事なデータを皆さんのパソコンの中にしまっておく必要がないということです。
 データは手元のパソコンにないと不安と思われる方も多いと思いますが、例えば100万円を自宅の鍵のつく引き出しに入れておくのと、銀行に預けるのとどちらが安心でしょうか?これと同じ理屈で、セキュリティが格段に高いSaaSを選択するという企業も実は多いのです。
 有名なSaaSは、非常に頑強なデータセンターで高度なセキュリティ環境に守られて稼動しています。データだけでなくSaaSの本体ソフトも一緒に厳重にガードされています。ですので、例え皆さんのパソコンが故障したりあるいは盗難にあったとしても、データとソフトはデータセンターという銀行に預かってもらっていますので、代わりのパソコンを準備するだけで、すぐに業務を再開することができるわけです。
 個人情報保護やウイルス対策などセキュリティへの対応が日に日に重要になってくるものの対策も難しくなってきている現在、中小企業が自身でセキュリティ対策を講じるのは難しいでしょう。その観点からもSaaSという選択肢が重要になってきています。
 このように良い事尽くめのように見えるSaaSですが、留意点はないのでしょうか? 実は、あります。
 今のところ、中小企業に必要な業務を全て提供してくれているSaaSはありません。元々のSaaSの考え方は、インターネット上にあるいろいろなプログラムを組み合わせて使うというものです。Web2.0の代表としてSaaSが取り上げられているのはこの点にあり、そのための国際標準も定められています。従って、各々のSaaSは部分的な機能しか提供しないわけです。
 そうなると、今度は使う側に組み合わせるという能力が必要となります。組み合わせはSaaS同志だけでなく、自社内のシステム(パソコンにあるパッケージソフト、EXCELなど)との組み合わせも考えないといけません。このような組み合わせをうまく行わないと、せっかくのSaaSの機能も十分に役立てることができなくなってしまいます。一部の業務はSaaSを使ってとても良くなったとしても、他の業務が旧態然としていては、業務全体の効率はかえって低下するというようなことが起きてしまいます。
 今のところ、この組み合わせを考えるにはプロの力が必要です。ITCはこのための訓練を受けているプロです。ですので、今後、読者の皆さんがSaaS導入を検討されるときには、是非ITCの力を活用されることをお勧めする次第です。


■執筆者プロフィール

氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 (株)オージス総研 技術部長
資 格 ITコーディネータインストラクター、ITコーディネータ、
    公認システム監査人

専門分野
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・IT統制