本当のCRM/小林 由香

 私は、本を読むことが好きでよく書店に足を運ぶのですが、最近はAmazon.comも利用します。Amazon.comのサイトにアクセスすると、トップページに「こんにちは、小林由香さん。おすすめの商品があります。」と表示され、その部分をクリックするとおすすめ商品のリストが画像とともに現れます。特定の書籍を購入しようと思ってアクセスした場合でも、おすすめ商品リストをみて、ニーズを満たした商品を見つけると「あっ、そうそうこれもついでに購入しておこう。」となるわけです。
 また、Amazon.comからメールで新商品の紹介やディスカウントセールの案内が来ることもあります。この場合もニーズに合致した商品の提案があれば、そこをクリックし商品の購入ページへアクセスすることになります。
 実は、この裏側には過去の購買履歴に基づいた大規模なCRM(Customer Relationship Management)の仕組みがあります。
 CRMとは、ITを利用して企業が顧客と長期的な関係を築く仕組みのことです。
 詳細な顧客データベースを元に、商品の売買から保守サービス、問い合わせやクレームへの対応など、個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して管理することにより実現します。顧客のニーズにきめ細かく対応することで、顧客の利便性と満足度を高め、顧客を常連客として囲い込んで収益の向上をはかることを目的としています。

 例えば、職場や家庭には毎日メールや郵便でたくさんの商品・サービスの案内が届きます。多量に来るため、興味がない場合は封も切らずに削除や処分をされることがしばしばだと思います。
 このような状況において、サイトへのリンクをクリックしてもらったり、手にとって読んでもらったりするためには、提案されているものがニーズに合った情報かどうかが重要となります。
 CRMの仕組みを利用することにより顧客の行動を細かく把握・分析することでニーズに会った情報をを提供することが可能となるのです。

 つい先日、感動的なダイレクトメールが届きましたので紹介します。
 年末、仕事の忙しさもピークに達したとき、そのダイレクトメールは届きました。以前、このメルマガにも書いたことがあるのですが、国内のリゾート地にある非常に満足度の高いホテルのエステティックサロンからの案内状でした。
 白を基調とした清楚なデザインのハガキに「ハンドこそ最高の贅沢。」とありました。肉体的にも精神的にも疲れがたまっていた私にとっては、まるで天の声のように聞こえたのです。しかも宛名と担当者からの挨拶の言葉は丁寧な手書きでした。温かみが伝わってきました。スケジュールが空いていたらすぐにでも予約して、飛んで行ったことでしょう。
 もしかすると、そのとき施術を受けながら、仕事のこと、忙しいシーズンのことなど、話していた内容を、担当者がカルテに記入しておられたのかもしれません。そして「そろそろ疲れがたまっているのでは?」という時期を見計らって案内状を発送したのでしょう。私はそんな思いをめぐらしながら気持ちはそちらに飛んでいました。
 そうなのです!これこそが本当のCRMなのではないでしょうか?
 真剣に顧客に対応すること。そしてそこから顧客の要望を把握し、分析する。
当然のことなのですが、なかなかできないことだと思います。このサロンに大掛かりなシステムが導入されていたかどうかは知る由もありませんが・・・。顧客一人一人のカルテに情報を記入し、それを分析し、活用する。その結果、タイムリーにニーズに合致した情報を顧客に提供し、感動さえ与え、またリピートを得る。このエステティックサロンはこのようにして顧客そしてロイヤルカスタマを増やしているのだろうと思いました。

 昨今、顧客との関係構築において、ITがインフラとして存在感を増しているのは事実でしょう。そして同時に言えることは、ITがいくら進化しても、商品やサービスの提供者もその受け手もあくまで人であるということです。
 私は、自分自身の顧客と向き合うとき、このことを再確認し、より良い顧客サービスを模索し続けていきたいと考えました。


■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)

小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条