バリュークリエーターとしての専門能力とは/柏原 秀明

1 はじめに
 スイスのIMD(International Institute for Management Development:国際開
発経営研究所)の2007年5月に発表された国際競争力の国別競争力ランキングによ
ると、日本の国際競争力は55カ国中24位となった。2006年は16位で上昇基調にあ
ると期待したが、残念な結果になっている。
 ちなみに、上位にランクされているのは,米国(1位)、シンガポール(2位
)、香港(3位)、ルクセンブルグ(4位)、デンマーク(5位)、スイス(6
位)である。アジア圏の国々はそれぞれ、中国(15位)、台湾(18位)、マレー
シア(23位)、インド(27位)、韓国(29位)、タイ(33位)である。
 この「競争力」の指標は、「経済状況」、「政府の効率性」、「ビジネスの効
率性」、「インフラ(基盤)」の4つである。この指標のみで、日本の現状およ
び将来の状況が,的確に評価され推測されるとは必ずしもいえない。しかし、一
旦、国際的指標に基づく評価結果が公表されれば、この結果の意図するところを
十分に吟味しなければならないだろう。日本が,このような順位に凋落したのは、
様々な原因が相互に関連しているのは自明である。また、その原因も、短・中・
長期と結果が発現するまでに時間差がある。日本の国際競争力ランキングが長期
にわたって凋落傾向にある今日では、短期的な解決・対応手段よりもむしろ、中
・長期的な視点における対応が効果的であり、かつ結果として持続的な国際競争
力維持に繋がると考える。このような背景に基づいて、ここでは、ビジネスにお
けるバリュークリエーター(Value Creator)について概説する。

2 ビジネス環境の大きな変化
 20世紀後半までのビジネス環境は、「何が売れるかわかる」環境,、すなわち、
「より品質の良いものを、より安く、より短時間」で作れば売れた時代である。
一方、21世紀に入った今日では、「何が売れるかわからない」環境になっている。
20世紀後半までは、ブルーカラー・ホワイトカラーの人達は、「割り振られた計
画による目標達成」を実現すれば良かった。しかし、21世紀の今日では、「割り
振られた計画」そのものが、常に使い物にならないほど変化の激しい環境になっ
ている。言い替えれば、「何を作れば売れるのか、何をすれば変化に対応できる
のか」をブルーカラー・ホワイトカラーの人達が、それぞれに責任者として全員
で取り組まなければならないのである。今日のこのような環境では、ブルーカラ
ー・ホワイトカラーの人達は、個々人が、バリュークリエーターの意識を持ち日
常活動をする必要がある。

3 バリュークリエーター
 バリュークリエーターになるためには,まず第1に専門能力を高める必要があ
る。この専門能力を高める考え方と方法を以下に説明する。

3.1 専門能力を高める考え方
 専門能力を高める考え方の1つにバリュークリエーターの「12要件」がある。
それを下記の3つのレベルに分類・整理し「12要件」の項目に対応させる。注記)

(1)レベル-1:外部環境変化への対応
 急激なビジネス環境、すなわち外部環境の変化に対応した課題発見と対策を実
施するために必要な要件レベルである。
 ・要件項目: [情報収集の範囲の設定,情報収集の内容吟味]
(2)レベル-2:業務の課題・解決への対応
 レベル-1にて設定した要件レベルに基づいて、自己および組織の業務に関係
する課題・解決に必要な要件レベルである。
 ・要件項目: [着手主義、繰り上げ対応、待機、自己学習、ジョブノート]
(3)レベル-3:自己実現に向けての対応
 レベル-1・レベル-2にて設定した要件レベルに基づいて、各種の業務課題
に対応した解決策を発見・実施できるレベルに到達した後、自己実現の達成に必
要な要件レベルである。
 ・要件項目: [資格・認定、指導、プロフェショナル・パス、キャリアドリ
フト、自己評価]

3.2 専門能力を高める方法
 具体的な専門能力を高める方法の一例には,つぎのようなものがある。

(1)外部環境の変化への対応方法(レベル-1)
 外部環境の変化情報を具体的に収集・分析する方法には、一般情報と専門情報
に分けられる。一般情報に関しては、「全国紙・インターネット・テレビ」等の
方法がある。一方、専門情報に関しては、各種のセミナー、団体の研究会、民間・
国レベルのプロジェクトへの参加により情報収集方法がある。
(2)業務の課題・解決への対応(レベル-2)
 業務の課題・解決の定石としての「P(Plan)D(Do)C(Check)A(Act)」の方法を基
本とし課題に対する優先順位・難易度・リソースの検討・設定方法の標準化、DR
(Design Review)制度の活用等がある。
(3) 自己実現に向けての対応(レベル-3)
 自己実現に向けての対応方法として、専門能力を向上するため「社外の人脈作
り」の努力・参画・継続的活動がある。

4 おわりに
 ここでは、ビジネスにおけるバリュークリエーターの専門能力を高める考え方
と方法例について概説した。スイスのIMDの国際競争力ランキングの日本の評価は、
決して誇れるものではないが、ブルーカラー・ホワイトカラーの人達がこぞって、
「バリュークリエーター」として実践されれば、再度、日本は復活できるものと
確信する。また、我が国を支える次世代の若者達の人材育成には、是非ともこの
バリュークリエーターの考え方に基づく教育実践を望むところである。

[参考文献]
[1] 酒井博司,「IMD:国際競争力ランキング」,pp.26-27,
                 三菱総研倶楽部2007 07,経済トピックス
[2] 田中丈夫,「技術経営論」,岡山大学大学院 2007後期 講義ノート

注記)「12要件項目」の詳細は,本稿では,割愛する。


■執筆者プロフィール

柏原 秀明

ITC京都理事
ITC、技術士(総合技術監理・情報工学部門)、APECエンジニア
ISO27001審査員補、ISO9000審査員補、公認システム監査人補


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