戦略策定のための脅威分析/梅津 政記

 経営戦略を策定するための常套手段として、SWOT分析を行います。

 SWOT分析は、会社の外部環境から、成長のチャンスとなる様々な「ビジネ
スチャンス」を捉えるとともに、会社の存続を脅かす「脅威」を明確にします。
そして会社の内部環境から、「強み」と「弱み」を明らかにし、それぞれ4つの
要素を組み合わせて、会社の「強み」を活かした「ビジネスチャンス」を見出す
とともに、会社の成長を阻害する「弱み」を克服し、外部からの「脅威」を無力
化するのです。
 経営戦略を構築するためには、まず、会社が置かれている競争環境が、魅力の
ある競争環境か、そうでない競争環境かを判断しなければなりません。
 競争環境の魅力度を分析するツールが、「脅威分析」です。脅威とは、会社の
外部にあって、その会社の業績を悪化させる要因のことです。これは、経済環境
や外部にある個人・組織などすべての要因を含みます。脅威が大きい業界は、一
般的に魅力のない業界で、その業界に属する企業は利益を出すことにかなり苦労
します。

 この分析は、マイケル・ポーターによって開発された「5つの競争要因」モデ
ルを使用することが最も有効です。これらの競争要因とは、次の5つです。

《5つの競争要因》
 ◆競合の脅威
 ◆新規参入の脅威
 ◆供給者の脅威
 ◆購入者の脅威
 ◆代替品の脅威
以下、それぞれの脅威について説明します。

1.競合の脅威
 自社商品の市場に競合企業が多数存在すると、激しい価格競争がくり広げられ
たり、新商品が開発されても、模倣により同種の商品がすぐに市場にまん延しま
す。
 競合の激しい市場では、企業は継続して高い利益をあげることは非常に困難に
なります。この環境では、競争力のある商品やサービスを継続して提供できる一
部の企業だけしか、高い利益をあげることができません。
 市場が成熟化し商品・サービスの差別化がむずかしい競争環境の下では、競合
の脅威が存在する可能性が高くなります。

2.新規参入の脅威
 新規参入がしやすい競争環境にあれば、企業間の競争がより激しくなったり、
いずれ競合の脅威にさらされたりします。一般的に競争環境に次のような特徴が
あれば、新規参入の脅威は高くなります。
 ■高いレベルの技術やノウハウを保有しなくても参入できる
 ■圧倒的なコスト優位性を持つ企業がなく参入してもコスト的に十分対抗できる
 ■参入企業がそれぞれ同規模で市場の影響力もそれほど強くない
 ■政府による参入の規制がない

 一方、会社が、新規参入に備え、競合激化の市場環境に巻き込まれないために
は次のような対策を採ることが有用です。
 ■規模の経済を確保し、コスト優位性を確保する
  企業規模で優位に立ち、生産の効率性や大量仕入による仕入価格の低減など
 により、参入企業よりコスト優位性を確保することです。

 ■規模の経済以外でコスト優位性を確保する
  ジェイ.B.バーニーによれば、規模の経済以外でのコスト優位の源泉とし
 て次のようなものがあります*。
  ・自社独自の占有技術
   既存企業が機密あるいは特許として、何らかの技術を持ち、それにより潜
  在的参入者のコストを下回るコストを実現している場合、潜在参入者は競争
  上、独自の代替技術を開発しなければならない。この代替技術の開発コスト
  が参入障壁として作用する。
  ・ノウハウ
   潜在的参入者が保有していない知識、スキル、情報を、既存企業が何年も
  かけて蓄積し、ごく当たり前のものとしている場合。この種のノウハウを蓄
  積するためのコストが参入障壁として作用する。
  ・原材料への有利なアクセス
   潜在的参入者が享受していない重要な原材料へのアクセスを、既存企業が
  低コストで実現している場合。同種のアクセスを獲得するコストが参入障壁
  として作用する。
  ・有利な地理的ロケーション
   既存企業が有利な地理的ロケーションをすでに押えてしまっている場合、
  同じような場所を確保するコストが参入障壁として作用する。
  ・学習曲線によるコスト優位
   既存企業の累積生産量が潜在的参入者に比べて大きく、その生産コストが、
  累積生産量に反比例して低下する場合。

 ■製品を差別化する
 既存企業の商品やサービスがブランド価値を持っており、顧客ロイヤルティー
が高い場合、新たな参入者が現れても競争上の優位性を確保できます。

3.供給者の脅威
 商品の仕入や、製品の原材料を購入する場合、供給者がそれらの供給量をコン
トロールしたり、値上げを主張してきたりする場合です。供給者側が少数の企業
で支配されていたり、供給者の製品に特徴があり差別化されていれば、供給者の
脅威は大きくなります。

4.購入者の脅威
 購入者とはお客様です。購入者側の力が強く値下げ要求をしてきたり、他社へ
の切り替えを実施したりする脅威です。購入者側が少数で規模が大きい場合や、
購入者に提供する製品が差別化されておらず価格競争に巻き込まれやすい場合は、
購入者の脅威が大きくなります。

5.代替品の脅威
 自社製品が提供する顧客満足を、異なる方法で満たす製品が現れた場合、代替
品の脅威が存在します。レコードがCDに取って代わったり、布おむつが紙おむ
つに凌駕されたりしたことがこの事例です。


 脅威分析の結果、自社の属する業界の脅威レベルが高く、収益を上げることが
困難な競争環境にある場合は、かなり研ぎ澄まされた経営戦略を策定しなければ、
高い収益を確保することができません。例えば、コスト面で優位に立つか、商品
やサービスの差別化で他社との違いをはっきりと打ち出すことが必要です。

 他方、脅威レベルが低く、収益を上げやすい業界の場合は、先行者利益を獲得
することが原則です。他社が参入して競争レベルが高くなる前に、規模を大きく
して仕入れ面や生産面で規模の利益を確保するか、他社よりも優位な立地条件を
確保するなどして、先手を打って他社より優位なポジションを得ることが必要で
す。



■執筆者プロフィール

梅津 政記(うめづ まさき)
株式会社サティス
中小企業診断士・ITコーディネータ
TEL:075―693―7812
FAX:075―693―7813
e-mail:m-umedu@satis-corp.jp


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