システムコンサルティング(以下、ITコンサル)と聞くと苦い顔をされる経営者の方がいます。期待していたものとかけ離れた結果しか出なかった、というのはよく聞く話です。
有名な会社だから安心だろうと任せていたら、自社では到底実現不可能なシステム投資案が出てきたり、勧められるままにシステムを導入したら現場の運用に耐えない、また運用コストがかかりすぎるシステムだったり、経営を支援するどころか足を引っ張るシステムの例は、枚挙に遑がありません。
こういった結果を引き起こす原因は、当然コンサルタントの資質にもよりますが成果を左右する大きな要素が、実は発注者側にあると考えています。
専門家なのだからコンサルタントに任せておけば安心、というスタンスではなく社内でワーキンググループを組織するなど、部門間で自社の課題や情報、具体的な目標感を共有し、トップ含む当事者自らが、自分達が会社を改善していくという気概をもって参画していくことが、成功の鍵を握っていると考えます。
こんな事例がありました。
あるシステム会社に、技術導入コンサルを提案した時のことです。
社員に短期間で認定試験に合格するレベルの技術を習得させるというもので、難易度も高く、見積金額も相当のものになりましたが、役員会にて承認されるのを待っていました。
ところが、社長が賛成されず、また急遽我々にお会いされたいとのこと。よほどお気に召さない点(金額か)があったかと、営業担当だった私は少々沈痛な面持ちで訪問しました。
ところが社長から、「金額を上げてすぐにでもスタートしてほしい」と言われ驚きました。
お話の内容は、
・企画書には、技術をいかに導入するか、しか書いていないからOKをださなかった
・社長にとっての目的は、社員に会社に利益をもたらす、稼ぐ人材に変わってもらうこと。新技術の導入も重要だが、その社長の「想い」を、しっかり理解して「想い」を社員に導入する工夫を加えてほしい
・この要求を企画書に追加するにあたって、金額をもっと上げてかまわないとのことでした。
見積金額アップの要求を受けたのは初めてで、非常にありがたいお話だったのですが、その社長の想いを受けたコンサルタントが奮起し(奮起しすぎて上がった金額以上の労力を割いていたようですが)結果として全員試験合格という最高の成果を収めることができました。
金額を上げていただいたこともさることながら、一部門のコンサルを行う我々に対し、トップが自らの言葉で熱意を伝えられたことが、コンサルタントのモラール(やる気)を引き出し、成功に至った大きな要因だったと思います。
今後、NGNの普及やSaaSやSOA、Web2.0から3.0への展開等、IT導入の選択肢は進化し増え続けていき、益々ITコンサルの重要性は増していくでしょう。
しかしこれからも、
・トップ自らが改革の先頭に立つ気概を持ち、目標とするビジョンを社内で共有化し、コンサルタントに依存するのではなく当事者意識をしっかり持つこと
・トップの熱意を社員、コンサルタントと共有するモラール・マネジメントこの2つが備わって初めてコンサル成功への道筋が開かれると思います。
ITコーディネータを始め外部のITコンサルタントは、豊富な知識と経験を持ち、社内だけでは気づかない斬新な発想や指摘をもたらします。
トップの熱意を理解し、最適な実現化へ向けて能力を発揮するコンサルタントであれば、その料金は単なるコストではなく、トップの悩みを削減する可能性を持った投資であると考えますが、いかがでしょうか。
■執筆者プロフィール
梶原 雄太
(オフィス トライ・リンクス)
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