5月に入り、4月入社の新入社員もすこし社会人生活に慣れたことでしょう。
今年は景気回復も手伝って売手市場だったようです。私はバブル崩壊後の最も厳しい時期に就職活動をしたので少し羨ましい気も致しますが、入社後に頑張って自分を磨くのは同じこと。自社も含め、今年の新入社員の皆様の成長を期待します。
さて、入社後すぐの新入社員教育で[報・連・相]という言葉を教える会社が今だ多いようです。報告=電子メールの時代となった今でも、報・連・相の基本は同じだと思います。最近、原子力発電所で臨界事故の報告が行われなかった事等もあり、正直に報告するという当たり前のことの大切さを今更ながら実感しています。結果や状況を正確に報告することが新入社員の一番大切な仕事だとしたら、中堅社員に求められるのは、ただの報告にとどまらずにちゃんと自分の意見を持って上司に対してサジェスト=提案することだと、考えさせられる出来事が先日ありました。
2008年2月21日に、私の住んでいる地域のBCリーグ野球チームの、富山サンダーバーズ監督・鈴木康友氏のお話を伺う機会がありました。私は野球についてはあまり詳しくないのですが、子供の頃のお話から読売ジャイアンツに入団されたときのお話など、大変わかりやすく興味深く聞かせて頂きました。その中で一番心に残ったのは、2002年以降に原監督に請われて読売ジャイアンツのコーチをしておられた時のお話です。
原監督は、長嶋監督時代にヘッドコーチをしていた経験から、自分が監督になられた時、自分には最終決定以外の選択肢を与えないで欲しい、とコーチの皆さんに言われたそうです。当時コーチの皆さんは鈴木氏を含め皆30代前後で若かったそうですが、実際に現場で直接選手に接しているコーチを全面的に信頼するので原監督に対しては「この投手で行きましょう!」、「この打順で行きましょう!」という言い方をしてください、と。選手の現在の状態を正確に報告することはもちろん大切ですが、その報告後、「どの投手がいいですか?」「どんな打順にしましょうか?」という聞き方はしないで欲しい、と言われたとのことでした。コーチのサジェストを受けた上で原監督が、最後に「よし、OK!」か「ダメ、考え直し」のどちらかの判断を下し、最終的な責任は原監督が取られたそうです。原監督自身、監督就任当初はお若かったのでコーチというブレインを最大限有効に機能させよう、という作戦だったのだと思いました。
このお話を伺った時、まず最初に思ったのは自分が上司に対してどのような報告をしているか、ということでした。どれだけ自分の意見を述べて提案をしているか、そう自分に問いかけた時、いわゆるお伺いを立てるような報告に終始している気がしました。上司に責任を丸投げして、上司の言う通りに行動している。
もちろんその方が私が楽だからですが、それではここまで私を育ててくれた上司がいつまで経っても楽にならないし、自分自身も成長しない、と反省しました。
また、報告を口頭ではなくメールで行う場合に(特に提案型の報告を行う場合)口頭での報告以上に気をつけねばならない、とも感じました。鈴木監督のお話とはすこし離れてしまいますが、メールを使って日々の報告をしている私たちは口頭で通じる細かいニュアンスまでフォローできません。提案型の報告をしているつもりが、上司からするとただの生意気な発言にしか取られない可能性があります。メールを使った報告の仕方で、留意すべき点をまとめてみました。
1)簡潔かつ正確に報告する。
電子メールでの報告は、ともすれば冗長になりがちです。私も含めてパソコンに慣れ親しんで育った世代ほど、手軽なコミュニケーションツールとしてのメールに慣れている為、だらだらとした文章を書いてしまいます。いわゆる5Wに留意して、簡潔に正しい事実を記述するようにせねばなりません。私は以前に、「概要」と「詳細」が混在していて読みにくい、という指摘を受けました。すべての報告で正確を期そうとする余り、細かく記述する箇所を点在させてしまったのです。概要を先にまとめて報告し、必要な箇所のみ細かく分けて書くように指導されました。
2)タイミングを見極める。
自分がメールを使うように、上司やお客さまも同様な使い方をしていると思い込みがちです。しかし、これだけメールが浸透している今でも朝と帰りの2回だけメールをチェックするユーザ様もおられます。また、なんらかのネットワーク障害で届いていなかったり、相手がずっと離席して打合せをしていた場合に自分は報告したつもりになっていた、というのは非常に危険でよくあることです。急ぎの報告であればあるほど、必ず確認を行うことが肝要です。逆にメールを使いこなしている人だからと安心していると、忙しい上司ほど大量のメールが届いている為、見落とされる危険性があります。大事な報告は「今メールしました」という形でフォローをする方がいいと思います。
3)事実と意見(提案)を分けて報告する。
提案型の報告においては事実と意見が混在していると、上司の判断の元となる情報が不正に伝わる危険性があります。口頭であれば、上司が報告の途中で事実を確認することができますが、メールでは一方的に伝えるだけです。そこで公正な判断を行ってもらう為に、まず事実を分かりやすく伝えることが大切です。以前せっかくメールで報告をしたのに上司にはうまく伝わらず、もう一度口頭での報告を求められたことがありました。正直なぜ分かってくれないのかと不満に思ったのですが、私が事実を分かり易く記述していなかったことが原因でした。
鈴木監督のお話を伺い、新入社員はもちろん、中堅社員、もっとベテラン社員になっても「報告」さらには「報・連・相」をブラッシュアップしていく必要性があることを痛感しました。メールを報告ツールとしている利用している私たちは、特に留意しなくてはいけないことがあり、それも含めて新入社員や部下、後輩に指導していかねばならないと思いました。さらには報告を受ける上司も、いつでも確認できる、というメールの報告の利点を生かしながら、口頭で受ける以上の情報を取得し、部下の報告を活用して行かねばならないと思います。
鈴木監督、自分を見直す機会を下さって、本当にありがとうございました。
■執筆者プロフィール
二上 百合子(ふたがみ ゆりこ) ITコーディネータ
北電情報システムサービス株式会社 http://www.hiss.co.jp