大転換期と中小企業の活路/玉垣 勲

☆大転換期
 アメリカのサブプライム問題が契機となったと思いますが、世界経済は大きな転換期に入ったと言えます。転換期の一事象は、基軸通貨のドルの信認が揺らいでいることにあります。長らく基軸通貨の地位にあるドル通貨は今後も数十年基軸通貨であり続けるでしょうが、その威力は序々ながら弱まるでしょう。それに代わってユーロがさらに長いスパンでみた場合、中国の”元”が国際通貨としての信認を高める可能性があります。
 BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国の台頭・経済発展が顕著になっていますが、それを象徴する現象が「石油、原材料価格の高騰」にあります。
 貿易立国である日本は、世界のマクロ経済の潮流を直視し、将来に備えなければなりません。

☆成長・発展の”カギ”
日本は戦後、荒廃の中から先進国に「追い越せ、追い抜け」を目標にがんばってきて、先進国の仲間入りができました。同様にいまや、アジアでは中国、インド、ベトナムが先進国へのキャッチアップに懸命です。とくに、中国、インドなどは、教育について理工科系の科学教育に熱心で、国は企業の振興策としてメーカー、ソフト産業のいわゆるIT化推進に積極的であり、経済の急成長振りは目を見張るものがあります。
 日本はこれまで「技術立国」として世界に名をはせてきましたが、その技術力の優位性もに陰りがでてきたと言われます。ある有識者は、これからの「ポスト産業資本主義の時代には、知識力、技術力、情報力の三要素が経済力発展の”カギ”となる」と述べています。情報力すなわちIT利活用の真価が問われているのです。

☆IT利活用の強力推進
 経済産業省は、20年度に中小企業の活性化策としてSaaSプラットフォーム作りに取り組みます。SaaS(サース)、Software as a Serviceは、インターネット経由でソフトを(借りて)利用するもので、すぐにでも利用できるSaaSサービスに「会計」、Web構築」、「モバイル情報共有」の3分野があります。
 地域経済は、かなり疲弊していることもあり、ある調査によると「地域中小企業のIT利活用は徐々に進展してはいるがまだまだ不十分である」と指摘しています。
 地域経済・企業の再生・発展が喫緊の政策課題となっています。本年度以降、全国の商工会では、地域経済の太宗を占める小規模企業を主対象に経営力強化策の一つとして、サースとくに「会計ソフト(”ネットde会計”)の導入・普及」を意図して小規模企業の財務体質整備・強化に本腰を入れます。

☆英知の結集を
 当団体は、6年前にITC京都として任意団体でスタートしましたが、4年前にNPO法人 ITコーディネータ京都と改組しました。以来、一貫して地域の経済、中小企業のIT利活用・推進のコーディネータを自認して活動してきましたし、今後ともその活動をさらに広げ深める所存です。またわが組織は、IT利活用に思い・関心のある方はどなたでも会員になれる開かれた団体です。
 どうかIT利活用による地域活性化その源泉である中小企業の活力増進に向け共々英知を結集してがんばろうではありませんか。


■執筆者プロフィール

玉垣 勲(たまがきいさお)
ITコーディネータ、中小企業診断士、社会保険労務士
ファイナンシャル・プランナー(FP)、通訳ガイド
(NPO)ITコーディネータ京都理事、(総務省)電子政府推進員