最新 検索エンジン事情~SEO対策だけで十分ですか?/杉村 麻記子

1.はじめに ~インターネット全体の検索エンジン

 インターネットの検索エンジンといえば、GoogleやYahooと思い浮かべる人が多いだろう。日本の検索エンジンのシェアは、1位がYahooで約6割、2位がGoogleで約3割となっていて、ほとんどの人がいずれかの検索エンジンを使っているということになる。世界全体を見た場合は、1位と2位が逆転して、1位のGoogleが約6割のシェアをもち、2位のYahooは約2割となっている。
 私個人的にはGoogleを使うことが多い。ただし、この検索エンジンで膨大なインターネットサイトのお目当ての情報にたどり着くためには、キーワード入力にちょっとした工夫やコツが必要だ。使い慣れていない人だとなかなか見たい情報にたどり着けず、何度もキーワードを入力し直すなどストレスがたまってしまう。
インターネット上の検索術を使いこなすことで、グッと生産性が高まり効率的な情報収集が可能となる。

 一方、自社のサイトに多くのお客様を誘導させたいと願っている企業やECサイトの運営者は、SEO(Search Engine Optimization)対策に力を入れてYahooやGoogleの検索結果の上位に表示させるための努力と投資を日々行っている。皆様ご承知のように検索結果の1ページ目に表示されないと利用者の目につきにくく、サイトへの訪問者も増えない。
 更にこのSEO対策に加えて、検索時に入力されたキーワードに関連した広告を表示させる「検索連動型広告」を利用する企業も増えている。代表的なメディアとしては、Yahooなどで表示されるOvertureのスポンサードサーチ、Googleで表示されるAdwordsなどがある。
 サイトを運営している企業にとってもこういった検索エンジン対策は、サイト誘導のための重要な戦術となっている。

 さて、本稿ではこういったインターネット全体の検索エンジンではなく、自社サイトに訪れた人向けの「自社サイト内検索」の最新事情を紹介したい。

2.サイト内検索とは?

 「サイト内検索」という小窓が各企業内のサイトやECサイトについているのを皆様もご承知だろう。各サイトで提供される情報量が増えれば増えるほど今度は自社サイトで情報を探すための検索エンジンが必要となる。
 これまでサイト内検索では、無料で提供されているnamazu(日本語全文検索システム)やGoogle フリー検索などが多く使われてきた。
 身近な例でいえば、ITコーディネータ協会のサイト内検索ではGoogleのキーワード検索が提供されている。

 →ITCAのサイト内検索
 http://www.itc.or.jp/search/index.html

 これらは手軽でかつ無料で使えるということで導入する企業も多い。但し、利用者にとっては、通常のインターネット検索と同様に必要な情報にたどり着くのが大変であったり、企業にとってもすべてのサイト内の情報を検索対象とすることが出来なかったり、訪問者に見せたい情報を上位に表示しずらいというデメリットもあった。
 せっかくSEO対策や検索連動型広告で自社サイトへの誘導に成功しても、その自社サイトでお目当ての情報にたどり着けないとなると訪問者はそのまま違うサイトに離れていってしまうこともある。そこでSEO対策対策に加えて、今度は自社サイト内での検索をもっと使いやすくするための対策が必要となる。

 その一つの方法として、「サムネイル型の検索エンジン」がある。

3.画像で確認! サムネイル型検索エンジン

 この検索エンジンを使うと、検索結果と共にページの画像イメージが表示され、マウスを画像のところに持って行くと拡大された画像がポップアップされる。
だから「検索結果をクリックしたあとに思っていたページと違ってがっくり・・」といったことが事前に防げるため、検索の効率アップが期待できる。
 ちょっと極端なたとえだが、自分が映したデジカメの写真を探すときにファイル名や日付で探すと時間がかかるが、サムネイル(画像)を表示すると一目瞭然で見つけることができる。画像は文字に比べると情報量が多く、必要な情報にたどりつきやすくなる。
 またサイト内の文書や画像などのデータを定期的に収集するクローリングの精度が高いものや、検索結果の表示順をサイト管理者が設定できるなどの機能を有しているものもある。このようにサイトに訪れてくれたお客様に快適に使ってもらうための工夫がなされる。さてこのサムネイル型検索エンジンの事例は百聞は一見にしかずということで、下記のサイトを一度ご覧頂きたい。

 →サムネイル検索エンジンをサイト内検索で提供している企業(例)

三菱電機株式会社
http://www.mitsubishielectric.co.jp/

株式会社バンダイ
http://www.bandai.co.jp/top.html

 これらのサービスは、SaaS・ASP型で提供されているので、特別なシステムを構築しなくても、検索窓タグの設定等で対応ができるためまでの導入まで時間がかからないのが特徴だ。価格帯も高機能版から簡易機能版まで取りそろえられているので中小企業でも活用することが可能だ。

4.更に進化するEnterprise検索エンジン

 ショッピングモールなど膨大な情報、商品情報などデータベースにある情報を対象とした検索の場合、いわゆるデータベース(RDB)の検索機能を利用すると結果が表示されるまで恐ろしい時間がかかってしまうケースがある。

 最大手のサイトでは、さらなる膨大なデータを扱える「Enterprise Search Engine」を活用するケースが増えている。
 Enterprise Seach とは、その名の通り企業内にあるあらゆる情報を対象とした検索のことで、通常の文書やグループウェア、イントラサイトはもちろん、ERPやSCM、CRMなど様々なフォーマットの情報を横断的に検索するものだ。
 この機能を使うと検索のスピードアップやキーワードとカテゴリーによる絞り込みが可能となり、膨大な商品からお目当てのものを効率的に探すことができる。

 皆さんご承知の楽天のショッピングモールでは、カテゴリやブランド名、価格などによる絞り込みができる。

 →楽天
http://www.rakuten.co.jp/

 例えば、キーワードに「ポケモン」といれると、検索結果として12,299件のグッズがヒットするが、左側の小窓にジャンルによる絞り込み対象とその件数が表示される。
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  CD・DVD・楽器(1265)
  インテリア・寝具・収納(359)
  おもちゃ・ホビー・ゲーム(6408)
  キッチン・日用品雑貨・文具(1561)・・・
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 このようにポケモングッズの中のどのジャンルの商品からお目当ての商品を素早く探すことが可能だ。(この機能がないと、1万件を超える商品から探すことになる。この機能を持っていないECサイトで商品を検索すると、お目当ての商品が見つからず困った経験がある。
 商品アイテム数が多いショッピングモールでは、こういった高度な検索機能を提供することで、訪問後の購買率を上げる工夫が重要だ。
 さてこちらの検索エンジンは、企業内に大規模なシステムを構築する必要もありまだまだ導入は大企業に限られているというのが現状だ。

 さてこのように検索エンジンは、情報検索の効率を上げるために進化してきている。SEO対策や様々なインターネットの広告に投資をして自社サイトへの誘導に成功したあとも、「サイト内検索」の機能が充実していないと、お客様を逃がしてしまう結果になりかねない。サイト運営の皆さんにとっても何らかの対策が必要となることをご記憶いただきたい。


■執筆者プロフィール

杉村 麻記子(すぎむら まきこ)

ITコーディネータ・中小企業診断士
NPO法人ITコーディネータ京都 副会長 広報局長
mailto:m.sugimura@nifty.com