いつでもどこでも会計/小林 由香

 残暑が続いておりますが、お盆も過ぎて朝夕は秋の気配を感じるようになりました。
 個人事業者である私は、開業以来、毎年お盆休みをひとつの区切りとして、上半期までの自分の経営する会計事務所の伝票整理や会計データ入力を行うようにしてきました。ところが数年前諸般の事情で、職業柄、大きな声では言えませんが入力作業が相当遅れたという苦い経験があります。
 そうなると、個人事業者の確定申告期限である翌年の3月15日を目前に、泣く泣く徹夜で自分自身の決算書を作成するというハメに陥ってしまうことになるのです。そしてこの悪夢は翌年も・・・。
 起業をして間もなくの方や、急に予想外の大きな仕事が入った場合など、こうした経験のある方は少なからずいらっしゃるのではないかと思います。
 どんなに忙しくても、請求事務と給与の支払事務は毎月決まった時期に行わざるを得ないが、ついつい自分の会計は後回しにしてしまう。月日の経つのは早くて、気がついてみれば目前に確定申告の期限がやってきます。
 そこで、自分自身の行動パターンを見直して毎日の活動の中でどのタイミングで会計に時間が割けるかを考えてみました。年々出張が増加し、車や公共交通機関での移動の多い私は、「いつでもどこでも会計」を思いつきました。思い切って会計ソフトをモバイルパソコンにインストールし、新幹線などの移動時間や、出張先での昼休みや休憩時間を利用して現金支払の経費を入力することにしました。出張のない場合でも、例えば夕方のメールチェック時などに、入力を済ませてしまうことにしたのです。
 「いつでもどこでも会計」に必要なものはモバイルパソコン、会計ソフト、あれば移動時のインターネット環境。財布に入っている領収書。必要に応じて預金通帳。インターネットバンキングを利用している場合は、銀行に出向かずとも、日本中どこからでもほぼリアルタイムで通帳の動きを把握することが可能なので通帳は持ち歩き不要。さらに一部会計ソフトでは、MSNマネー残高照会サービスなどを利用することによって、預金の取引明細をデータ変換し会計ソフトの預金出納帳に取り込むことも可能です。
 1日分でしたら現金取引、銀行取引合わせても入力作業は非常に短時間で済みます。また、公共交通機関など領収書の取れない経費の入力も忘れずにすることが可能です。業種によっては1週間に1度程度の作業でも十分間に合います。
 会計に慣れていなくて勘定科目(売上、仕入、給料、交通費のような収入や支出の会計上の分類項目)が判らなくても、日付、金額、項目のみ入力しておいて、分類不明の勘定科目は「科目不明」で保留にすることもできます。
 また、最近の会計ソフトは支出内容から推定して勘定科目の候補を呼び出せるものもあります。
 更に、インターネット会計を導入している会計事務所と契約していれば、モバイルパソコンで入力したデータを、そのまま会計事務所のサーバ宛に電子メールに添付して送ることもできます。万が一データが消えてしまった場合でも安心です。
 もちろん、モバイルパソコンで会計を行う場合は、データのバックアップ、セキュリティ対策など十分に行うことはいうまでもありませんが。

 いかがでしょう。これなら未処理の領収書や伝票を何ヶ月もためてしまう心配はなくなると思われませんか?
 もしも、確定申告の期限を目前に真っ青になったご経験のある方がおられましたら、私の苦い経験をもとにした「いつでもどこでも会計」をご参考にしていただければ誠に幸いです。


■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。