中小企業の事業承継の円滑化への支援策/竹内 政明

 中小企業の事業承継の円滑化に向けての支援策として「中小企業における経営
の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)」が平成20年5月
9日国会で成立し、本年10月より施行される予定です。また、税制面では平成
21年税制改正において中小企業の自社株等の相続税の納税を猶予する特例措置
が創設される予定で、成立すれば本年10月に遡って適用される見込みです。

1.中小企業経営承継円滑化法の概要
 
 本年10月施行予定の中小企業経営承継円滑化法による支援措置には、遺留分
に関する民法の特例、金融支援制度が創設され、来年度の税制改正で自社株等の
相続税の納税猶予の特例の創設が予定されています。これら3つの支援措置の内
容は以下のとおりです。

(1)遺留分に関する民法の特例
 
 現行の民法では、後継経営者に自社株式等を生前贈与しておいても事業承継相
続人以外の相続人から遺留分の減殺請求があると、生前贈与された自社株式等を
相続発生時点での評価額で遺留分計算の基礎財産に含めることとなり、自社株等
を権利者に渡さざるを得なくなるとともに、相続発生時点から生前贈与を受けた
株式も含めて議決権の行使ができなくなる恐れがあります。また、自社株式等の
贈与を受けた後継者が大変な努力をして、その評価額が2倍、3倍となった場合
でも相続が発生した時の遺留分を計算する際の評価額は相続時の評価額となり、
後継者の努力による上昇分まで他の権利者に帰属するという不合理なこととなり
ます。そこで当事者の合意があれば
1.生前に贈与した株式等を遺留分算定基礎財産から除外
2.生前に贈与した株式等の評価額を合意時点の評価額に固定
できる制度が創設されました。
*遺留分とは法定相続人(被相続人の兄弟姉妹を除く)に認められる一定割合の
相続財産
 
(2)金融支援 
 
 経営者の死亡等に伴い必要となる資金(相続等で分散した自社株式や事業用資
産を後継経営者が買いとる場合や多額な相続税の納税資金が必要な場合、後継経
営者が取引先や金融機関から信用を獲得するまでの取引条件悪化に伴う運転資金
などの資金需要)の調達を支援するため、以下の金融支援措置があります。
1.中小企業信用保険法の特例
2.日本政策金融公庫法の特例

(3)相続税の課税についての措置(平成21年税制改正で創設予定)

1.納税猶予制度の概要
 事業承継の際の障害の一つである後継者の自社株式の取得に関する相続税負担
の問題を解決するため、平成21年税制改正において、非上場株式等に係る相続
税の軽減措置(納税猶予制度)が創設される予定です。具体的には、後継経営者
である相続人が非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の
株式等を取得し、その会社を経営していく場合にはその後継者が納付すべき相続
税額のうち、相続等により取得した議決権株式(相続等の結果、相続開始前から
既に保有していた議決権株式を含めてその会社の発行済議決権株式の3分の2に
達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する部分の相続税額が納税猶
予されるといううものです。
2.納税猶予制度の主な適用要件
a被相続人
 ・会社の代表者であったこと
 ・被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ
  同族内で筆頭株主であったこと
b相続人(後継者)
 ・会社の代表者であること
 ・相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同
  族内で筆頭株主となること
3.5年間の事業継続
 相続税の申告期限から5年間については経済産業大臣のチェックを受けること
 とされ、下記に該当する場合には猶予を受けている税額の全額を利子税ととも
 に納付しなければなりません。
 ・代表者でなくなった場合
 ・雇用の8割以上を維持しなくなったとき
 ・相続した対象株式の一部でも譲渡したとき
4.納税猶予税額の免除
 事業を承継した相続人が納税猶予の対象となった株式を死亡の時まで保有し続
 けた場合など一定の場合は、猶予税額の納付が免除されます。
5.租税回避行為の防止措置
 個人資産の管理等を行う法人(資産保有型会社、資産運用型会社)の利用等に
 よる租税回避行為を防止する措置がとられる予定です。

2.対象となる中小企業者
 対象となる中小企業は、「一定期間以上継続して事業を行っているものとして
経済産業省令で定める要件に該当する会社」とされ、上場企業、店頭公開会社は
除かれます。また、中小企業基本法に定める中小企業の規模(下記)でなければ
なりません。(業種により範囲は拡大される予定)
中小企業基本法が定義する中小企業
          資本金 又は 従業員数
・製造業その他  3億円以下  300人以下
・卸売業     1億円以下  100人以下
・小売業    5千万円以下   50人以下
・サービス業  5千万円以下  100人以下


■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)
TEL075-863-3377
FAX075-863-3378
e-mail masaaki@oak.ocn.ne.jp


 

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