アメリカのサブプライムローンに端を発した世界的な金融不安、世界同時不況はますます底なしの様相をなしてきました。どこまで行くのか、行き着く先(ゴール)が見えない戦い程不安な事はありません。
実態のない経済に世界中が振り回されている状況で、大企業は生き残りをかけた最後の戦いに突入したような感があります。一方で、ほとんどの中小企業はというと、今までマネーゲームを繰り広げていた銀行の融資慎重化が極端になり、その余波をもろに被った難破船のように何時沈むかわらないダッチロールを繰り返していますような状況です。(金融機関の対応はいつものことなので、いまさらですが…)
というような世界情勢の中で、今世界中の大企業が生き残りを賭けているからこそ、日本の中小企業に注目しています。
何故そのような状況になってきたかと言いますと、
1.各企業はノウハウの流出等を恐れて極力独自での研究開発を進めていた(ブラックボックス化)が、利益重視の考え方からコア技術以外をアウトソーシングしましたが、今回の世界的な不況の前では限界
2.現代の経営スピードに、自社の研究開発だけではついていけない
3.インターネットに代表されるグローバル化により、世界規模の調達先が可能
4.先端技術に関しては、まだまだ日本の中小企業は世界的に優位性を持っている
5.オープンイノベーション(外部技術を利用した革新)をいう考え方が世界的にも主流
等の理由があげられると思います。
このような世界的な大企業のニーズは、中小企業にとって外部環境の変化・SWOT分析で言う機会に当り、金融機関の融資慎重化=脅威とを相殺しても余りある絶好のチャンスが到来しているのではないでしょうか。
このような時代をチャンスと捉えるのか、脅威と捉えるのかの境目はどこにあるのでしょうか 中小企業の側からこの波に乗るヒントを考えて見ましょう。
一番大切なことは、言うまでも無く自社のコアコンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)が何であるかをしっかりと自分達が認識することであると思います。
コアコンピタンスは「商品」のような有形物である必要はなく、無形物である「知的資産(人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等)」もりっぱなコアコンピタンスとなります。
(*京都府では「知恵の経営」というマネジメントツールを用意し、このような知的資産に対する経営者の気付きをサポートする取り組みを行っています。)
このコアコンピタンスを自分達で再認識した上で、今の時代にあったビジョンを策定していきます。現代のように複雑に入り組んだ状況では、自社内だけで世界的な視点での考察はかなり限界あります。外部の有識者(中小企業診断士、ITコーディネーター等)をうまく活用することも、改めて気付くきっかけになることも少なくありません。
ここまでの一連の作業は決してスピードを求めません。というよりはむしろ多くの時間をかけて納得するまで深堀することが、この先に戦略の成否を分けると言ってもよいと思います。
さて、この次の段階では、やはりスピードがかなり重要な成功要因となります。
と言うのも先に述べたような外部環境は、すでに現在進行形のチャンスであるからです。
実際の経営でも売上・設備投資等と仕入・人件費等に回転差があることが通例ですので、資金面からも同様のことが言えます。実際の戦略上はどのような手段で自社のコアをアピールするかですが、多くの中小企業は宣伝費をあまりかけることが出来ません。そこで、インターネットを利用した情報発信がコストパフォーマンス・グローバルどちらも面からも最適なツールであることは異論のない事だと思います。
世界中の大企業にいかにして自社・商品・技術を知ってもらうかがポイントとなります。
以上、紙面上の関係でここまでですが、世界的な不況だからこそ日本の中小企業は今注目されています。この波に乗り遅れない為にも中小企業の皆さん、是非今一度自社のコアの棚卸・グローバルな視点での機会の発見・的確な経営戦略・ITを有効活用した戦術策定とどんどん変化(改善)を繰り返しましょう。
変わらないと言うことは、相対的には後退していると言うことを再認識して、今の時代を是非チャンスとしてマクロ的な視点で「今」を捉えてみてください。
■執筆者プロフィール
高松 崇(たかまつ たかし) memis代表
ITコーディネーター・システムアナリスト
中小企業基盤整備機構 経営支援アドバイザー
京都府「知恵の経営」ナビゲーター
mail: takamatsu@memis.jp
http://www.memis.jp